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第27話

 ……? だまし討ちも同然のやり方で人を組み敷き、あろうことか、いたいけなムスコを第二の標的と定めた場面で用いるに適切な副詞だろうか。  チン拓……なんつう、えげつないことを考えつくんだろう。 「こそ、こそばゆい!」 「少しの辛抱だ。我慢しろ」  と、軽く太腿をつねられても、くすぐったいものは如何(いかん)ともしがたい。どうしても腰が揺れ動いてしまうし、足もばたつく。  チョコソースにまみれた刷毛が螺旋を描きながら幹全体を這い回るところを、試しに想像してみてほしい。ここで咲良さんにあやかって自分もやりたい放題にふるまってみたいと思った貴方はドSです、太鼓判を押します。  閑話休題。タイムトンネルをくぐり抜けて昨夜の同時刻の実家の自室に瞬間移動できうるならば、盗み撮りした咲良さんの秘蔵写真集に頬ずりする二十四時間前の俺に、 「おまえは明日の今ごろ、愛しの咲良さん御自ら刷毛でおちんちんにチョコレートソースを塗ってくださるという僥倖(ぎょうこう)に恵まれる。だまされたと思って今夜は特に念入りに某所を洗っておくように」  是非ともこう忠告してやりたい。 「ん……ぅ、あ……マジに勘弁してください。俺、人一倍くすぐったがり屋なんです!」  刷毛の毛先が鈴口に忍び込めば、なりふりかまっていられない。むず痒い、とは一概に言い切れない不思議な感覚に腰がくねりだす。  あえて事細かに説明すれば、裾野から裏筋の起伏に至るまで満遍なく刷毛でこちょこちょされるにしたがって、蛋白質を主成分とするシロップが分泌されて、ぷくり、ぷくりと頂に露を結ぶ。  その、いかがわしいシロップはチョコソースと溶け合って幹をつたい落ち、茂みをぬらつかせるわ、タマ袋が妖しい色に染まるわ、と大騒ぎ。  笑いころげながら暴発の憂き目を見ちゃった日には男子一生の恥で、咲良さんに介錯をお願いして、腹をかっさばくようだ。  歯を食いしばって持ちこたえ、けれど刷毛が血管に沿って来た道を折り返したせつな、ついに泣きを入れた。

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