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第29話

「くぅ……うう……」  俺は全身を突っ張った。半紙で隔てられているおかげで多少なりとも衝撃がやわらぐとはいっても、淫技をほどこされている事実に変わりはないわけで、高校球児だった時代に延長十五回をひとりで投げ抜いたとき以上に厳しいものがある。  色即是空、空即是色……と唱えて、輪郭をなぞり下ろす指の動きを堪え忍んだ。  先端のくびれには殊に半紙をくっつけにくいらしくて、 「失敗だ。また、ムラができた」  チン拓をとるからには仕上がりにこだわりたい、という気持ちは理解できなくもない。けれど鈴口付近は、とりわけ敏感なんです。  性感が密集しているポイントで執拗に指を曲げ伸ばしされると、いわゆるガマン汁がとろみを増して……マジに、マジに爆ぜるかもしれない!  半紙を何枚もぐしゃりと丸めて捨てたすえに咲良さんは、あどけなく笑み崩れた。  こなた、俺はぐったりと躰を伸ばした。 「峨峨(がが)たる高峰に見えなくもない構図といい、チョコの濃淡の加減といい、水墨画風の傑作ができた。額に入れて壁にかけておくことにしよう」 「勘弁してください!」  俺は蒼ざめ、ぶんぶんと首を横に振った。 「たとえば友だちが遊びにきたさいに麗々しく飾られた粗チンに興味をもったと仮定してですよ? 『これはカクカクシカジカ』と微に入り細をうがって謂れを説明してごらんなさい。どんびきされるのは序の口で、違う種族の友だちが、いっぺんに百人単位でできちゃいますよ……むががが、んっ!」    うるさい、と掌で口をふさがれた。口を真一文字に結ぶのと相前後して、白皙の(おもて)がへその向こうに沈んでいった。  面食らい、金縛りに遭ったような状態にある間に、やんちゃ坊主が温かなものに、要するに口中の粘膜に包まれたのであった!  これは果たして夢か(まぼろし)か。ちゅばちゅばとカリを吸われ、サオを甘咬みされて。不意討ちに次ぐ不意討ちの嵐に、今この瞬間に心臓麻痺でぽっくり逝ってもおかしくない。  咲良さんが、その清らかなる唇にエンガチョなものをぱっくんちょあそばしてフェ、フェ、フェラをしてくださるだなんて、人類滅亡の危機を遙かに上回る一大事だ。  感涙にむせぶ前に、ありがたすぎて、俺はカチンコチンにしゃっちょこばった。

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