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第36話

 言い訳がましいかもしれないけれど、ちょびっと、あくまでちょろっと乳首をつんつんしようとしただけなんですよ?   ぽちり、とワイシャツに影を落とす箇所に狙いを定めて胸元を探りにいくと、さすがに有段者だけのことはある。むむ、殺気、といった感じに乳首をつまむ直前に手をはたき落とされた。  瓢箪から駒で両思いになった(……独り相撲じゃないと信じたい)ことを祝して、さわりっこプラス、しごっきっこをしたいと望むのは罪深いことなのですか?   BLものの王道をいって花を散らす立場を奪取したいだとか、今さら反撃の狼煙(のろし)をあげるつもりは毛頭ないのに咲良さんときたらイケズだ。  ケンもホロロに俺をあしらっておきながら、手癖が悪いぞ、お仕置きだ、といいたげに(うち)をかき混ぜてくる。  生クリームが温まって、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音にエコーがかかりゆくなか、指が浅く深く沈む。中指と人差し指が入口でひしめき、あるいは、てんでに泳ぎ回る。  襞を巻き取るようにしながら指が一ミリ刻みに道を切り拓いていけば、えずくようだ。  俺は汗ばんだ両の手を拳に握った。ものは考えようだ。かねがね思い描いていたとおり俺が咲良さんを組み敷いていれば、興奮するあまりブレーキがまったく利かなくて、花びらがめくれるのも待ちきれずに挿入(はい)ろうとしていた。咲良さんに裂傷を負わせずにすんだと思えば、泣く泣く受け身に回った甲斐があるかも。  そんなこんなのすえに、指が恥丘寄りの一点を捉えた。ぬくっ、とそこを押された瞬間、 「あ……ん」  口許を両手で覆いながら、台所中をきょろきょろと見回した。今の……俺の声じゃないよな? 断じて、違うよな? ひとっところをもっとイジメてほしいと、せがむ響きをはらんだやつが俺の声のわけがないよな……?  「よし、金鉱を掘り当てたぞ。このドロップス状の突起が精子の運動を促進する前立腺であるとともに、早瀬を極楽に導いてやれるポイントだ」 「くぅうっ、ん、んん……」

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