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第39話
腐女子ならびに貴腐人のみなさま、夢をぶち壊して、ごめんなさい。姉ちゃんの愛読書を読み漁ったすえに俺なりに分析した結果、
「大柄なほうが攻、華奢なほうが受と役割を分担すべし」
すなわちBLの世界ならではの法則を発見するに至った次第であります。
すね毛の処理を怠っているわ、ごついわ、と〝受〟の定義に背くデカぶつのくせに剣 が玉門をこじ開けにかかればビビってしまう。
大好きな大好きな大好きな×無量大数の咲良さんに番いたいと望まれて、本当ならうれし涙にかき暮れてしかるべし場面なのに、意気地がないったらありゃしない。
あと一勝すれば甲子園出場の切符を摑むところまでいった高校時代、マウンド度胸はずば抜けている、と評されたこともあるわりには「どんと来い」と足をおっぴろげてみせるくらいの根性もないなんて、ヘタレ野郎丸出しだ。
力みかえると菊座が連鎖的にすぼんで、ご令息を押し返す。まるでイタチごっこだ。
こじ開けられると自然と躰がずり上がり、頭が流し台にぶつかって不粋な音を立てる。愛の儀式にふさわしい厳かな雰囲気に包まれるどころか、挿入れさせろ、ご無体なと、この期におよんで組んずほぐれつせめぎ合って。
いやはや、咲良さんと初床 にこぎ着けるという想像の中では余裕たっぷりに彼をリードしていたのに、現実はコメディの様相を帯びて、とほほ……。
「羞じらっているのか焦らしているのか。早瀬のここは、おれを頑なに拒んでつれないな」
「ゆっくり来られると、よけい緊張して例のアソコが締まっちゃうみたいなんで、いっそのこと力ずくでぶち込んじゃってください」
「すばらしい啖呵だな。期待に応えなければ、と闘志が湧くぞ」
スポ根系のノリはいらない、程々でいいと、さりげなく腰を引けば、逆にがっちりと摑まれた。
「交わりを結ぶ瞬間の顔を拝めないのは残念だが、このさい贅沢は言っていられない。挿入れやすさを重視して四つん這いになって」
……もしや、それは後背位で貫通式を執り行なう、という旨の婉曲的な言い回しでありましょうか。
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