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第41話

「早瀬、喜べ。すでに四分の三は挿入った」 「はっ、はぃいいいい」  いいかげん、ぎちぎちにつめ込まれている気がするのに番いおおせるに至らないなんて、詐欺だ。挿れられたとたん、めくるめいちゃうBLものの主人公が羨ましいったら。  こんな図体ばかりデカくて、ズルチンで甘みをつけたチョコ以上に旨みにとぼしい躰で咲良さんに満足してもらえるんだろうか……。 「痛っ、つぅう……!」 「乱暴にして、すまない。ほどよく()れた襞ひだが、おれに盛んにまといついてきて、はしゃぐものだからだから、ついタガが外れた」  泣き笑いに(なか)がうねると、可愛い、と囁かれて襟足をついばまれた。その慈しみに満ちた仕種に痛みが薄らげば、緊張もほぐれる。  肉襞の連なりが、優婉さと猛々しさを併せ持つドリルにしなだれかかりはじめるのを待ちかねて、切っ先が奥園めざして突き進む。  時にじわじわと、時に荒々しく征服される。指とは較べものにならない量感に、腹がはち切れそうだ。  肘が砕けた。先を競って膝が砕けた。前のめりに躰がかしいだところを抱き戻されて、仕切り直しといく。  うれしいのと、ちょぴり哀しいのが、ごっちゃになった思いがシャボン玉のように浮かんでは消えて涙腺が決壊する。首をねじ曲げた。涙の膜が張って咲良さんの姿がぼやける。  すると、 「二世の契りを結び遂げて万々歳だな」  耳たぶを食まれた。病めるときも健やかなるときも咲良さん、あなたを愛し抜くと誓います、と囁き返してみたりして。 「にわか仕込みの知識だが、前立腺への刺激のみで絶頂に達することをメスイキというらしいな。それで早瀬をイカせるのが男子の本懐と位置づけるまでに征服欲をかき立てられるセックスは、初めてだ」  苦笑気味にそう独りごちながら、胸をはだけた。ワイシャツの裾をばたつかせて、胸元に風を送り込んだ。  うがたれているさなかでなければ、その美しい半裸体を伏し拝んでいた。咲良さんは着痩せする性質(たち)だとみえて、蓋を開けてみれば典型的な細マッチョだ。  均整のとれた体軀はダヴィデ像そのもので、桜色に染まった肌と純白のワイシャツが鮮やかなコントラストをなす。  そして特筆すべきは珊瑚色のちっちゃな乳首。あの、ささやかな尖りをちゅくちゅくするのは俺のほうだったはずなのに、はずなのに、はずなのに……。

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