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第42話

 それはそれとして眼鏡が汗ですべるようだ。咲良さんは、攻め込んでくる合間にしきりにブリッジを押しあげる。そのあげくウザったさが頂点に達したようで、舌打ちひとつ眼鏡をむしり取った。  うっすらと口を開いて、甘みを増した吐息を逃がすさまは凄艶の極みだ。俺は生唾を飲んだ。ゲンキンなことに刺し貫かれた衝撃でうなだれたムスコが、一気に天を衝いた。  返り討ちに遭う覚悟で咲良さんに挑みかかってみようか、と誘惑に駆られ、ところが右手を摑み取られたうえに秘部にいざなわれた。 「おれがどんなふうに早瀬を可愛がっているか知りたいだろう? さわってみてごらん」 「乳首をチョメチョメされた時点で、軽ぅく俺のキャパを超えてます。勘弁してくださいよぉ……っ!」  右手を振りほどきざま、ダイニングテーブルの脚にしがみついた。このとおり手がふさがっていてご要望にお応えしかねます、というパフォーマンスを演じたものの、それは悪あがきだ。  お目こぼしにあずかるどころか、残忍性を帯びた色が切れ長の双眸に宿った。あっ、いやな予感……。 「っ、あぅ、うう……!」  ずん! と楔を打ち込まれた。その拍子にファスナーの鋸歯状の部分が、ざりざりと尻たぶを薙いでいった。  スラックスの前立てが素肌に密着するということは、それは裏を返せば咲良さんのチン長に相当する深みまで、陣地を明け渡したという証しに他ならないわけで……。  二回、三回と力任せにえぐり込まれるたびに襞が攣れて、鋭い痛みが脳天まで突き抜ける。かちょおぉ……うなり声と涙声が混ぜこぜになったやつを振りしぼりながら、(こうべ)をめぐらせた。  雨空の下、うらぶれた通りをうろつく捨て犬を思わせる泣き顔が、淡い色合いの虹彩に映し出される。我ながらSっ気をくすぐられるしょぼくれっぷりで、それは咲良さんの観点に立てばなおさら好き心をそそられるものだったみたいだ。  再度、右手を谷間に引っぱっていかれた。ひとかどの柔術家は握力もハンパない。有無を言わせず核心をまさぐってみるよう促され、おっかなびっくり指を伸ばした。

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