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第五章・ふたりの愛情と、輝く未来【2】

 壱琉はからかうつもりなど毛頭なかったが、小さな拳がポカポカと胸を叩いてくるのを黙って受け止める。  プリプリ怒っているチカが何度も口にする自分への罵倒に〝あるルール〟が存在することに内心でニヤニヤしながら。  いっちゃんのバカ。いっちゃんなんか知らない。もう話しかけないでと怒鳴りはするものの、チカは決して『いっちゃん嫌い』とは言わない。  売り言葉に買い言葉の場合でも、一度も『嫌い』を口にしない。そんな言葉など、この世に存在しないかのように。  それが、他者から見れば歪な愛情に囚われている壱琉をどれほど救済してくれているか。 「あっ、チカ、すごくいい仕返し思いついちゃった。チカもいっちゃんの指なめる!」 「いや、断る。俺的にいろいろと差し障りがあるから、それは断る」 「えーっ、いっちゃんのケチ」 「ケチで結構。そのプレイはお前にはまだ早い。お子様のうちはな」  救済の天使は、余計な煩悩も無邪気に与えてくるから、壱琉の我慢と苦労はまだ続く。 「なぁ、チカ。お前が作ったチョコ、すげぇ旨い。折り紙のチューリップもサンキューな。マジありがたいから、今日から家宝にする」 「やった! チカもうれしい。いっちゃん、大好きっ」 「ん。それと、いつか、お前も我が家の一番の宝物にする」 「よくわかんないけど、いっちゃんがうれしいなら、いいよ。かわりに、いっちゃんをチカがもらうねっ」  ——ハッピー、ラブリー、バレンタイン! ーFinー

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