12 / 44

第12話

友也は頬をポリポリと掻きながら 「熊さん、自分をそう思ってたんだ」 と呟いた。 はぁ?何が言いたいんだ?と、3人の顔を見てると 「あのさ……、熊谷君。可愛い顔してるよ。確かに身体は大きいけど、その体格に反してその顔の小ささは羨ましいよ」 って、隣の美人が呟いた。 「そうそう!大体、身体がデカい奴って、蓮みたいに顔が長いよね」 「あぁ!」 友也の言葉に、蓮というイケメンが友也の胸ぐらを掴む。 「気にしてたんだ~」 苦笑いする友也に 「はいはい、蓮。その辺にしてあげて」 と、友也の健人が蓮というイケメンの腕を掴み、友也の胸ぐらから手を離す。 「はい、刺し盛りね。で、何の話?」 と、友也の隣にさりげなく立っている。 なんか……愛されてるって感じだな。 そう思いながら、ふと創さんを思い出した。 いつも、何を考えているのか分からない横顔。 多分、俺以外を近くには置いていないから、信頼はしてくれてるんだろうな……とは思う。 それとも……下僕だから? ぼんやり考えていると 「飲み物、何にします?」 と、友也の健人が俺に微笑み掛けた。 イケメンの笑顔は、破壊力が凄い。 「あ!あの……烏龍茶で」 俯いて言うと 「え?熊さん、飲まないの?」 と、友也が俺の顔を覗き込む。 「酒……飲んだ事無いから……」 「了解、烏龍茶ね」 友也の健人はそう言うと、軽やかにカウンターへ戻ってグラスを出すと、烏龍茶を入れて戻って来た。 その間にも 「健人~、こっちにビール」 「健人~、メニュー見せて」 の声に 「はいよ」 って笑顔で答えて、俺に烏龍茶を持って来る前に、手書きのボード板をお客様に渡して、俺の前に烏龍茶を置くと、ビールを入れに戻りながら、グラスが空いているお客様に 「お客様、お飲み物はどうなさいます?」 と、声を掛けている。 周りをよく見ていて、テキパキと無駄の無い動きをしていて尊敬の眼差しで見てしまう。 思わずガン見していたらしく 「熊さん!健人は俺のですよ!」 と、友也が顔を出して来た。 「いや……、良く働くなぁ~って。友也もそうだけど、フロア担当って凄いなぁ~と思ってさ……」 ポツリと呟いた俺に、友也は照れたらしく恥ずかしそうに頭をかいた。 「友也から聞いたけど…あんたがコーヒー担当してから、客が増えたって。あんただって、自分の仕事をちゃんとしてるんじゃねぇの?」 蓮というイケメンがポツリと呟く。 「え?」 驚く俺に 「そうなんだよ!それでね、今日、熊さんとハルちゃんを引き合わせたかったのは、ハルちゃんのコーヒーを熊さんに飲ませたくて!」 と、友也が叫んだ。 「え?僕のコーヒー?」 驚く美人に 「熊さんに、ハンドドリップ式のコーヒーを飲んで欲しくて!」 そう言って友也が微笑んだ。 「ほら、うちの店。機械じゃない?俺はやっぱり、ハルちゃんみたいなハンドドリップ式が好きだなぁ~」 と続けた。 「ハンドドリップ式なんですか?」 俺が隣の美人に訊くと 「あ、うん。うちは小さなお店だからね」 と頷き 「機械には機械の良さがあるじゃないか。毎日、同じクオリティでコーヒーが飲めるんだから」 そう続けた。 「俺も教わったけどさ~、ハルちゃんみたいに上手く入れられなかった~!」 「僕はもう、20年近くやってるからね」 美人の言葉に 「え!」 って驚くと 「あ!子供の頃からって意味だよ!」 と言われてホッとした。 「物心着いた時には、お店の中に居たからね。両親に教わって、小学校の高学年から家族のコーヒーを入れてたかな?」 懐かしむように目を細めて話す美人の話を真剣に聞いていると 「熊さんは、運動を何かしてたの?」 と、蓮というイケメンが聞いて来た。 「?いや、別に」 「え?それでその筋肉?」 そう言われて 「畑仕事してたから……」 と呟くと 「あ!そうか!あの美味しい野菜!」 隣の美人と蓮というイケメンが声を揃えて叫んだ。 俺が驚くと、友也が 「熊さんにお裾分けして貰った野菜とお肉、ハルちゃん達と食べたんだ」 って微笑んだ。

ともだちにシェアしよう!