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第12話
友也は頬をポリポリと掻きながら
「熊さん、自分をそう思ってたんだ」
と呟いた。
はぁ?何が言いたいんだ?と、3人の顔を見てると
「あのさ……、熊谷君。可愛い顔してるよ。確かに身体は大きいけど、その体格に反してその顔の小ささは羨ましいよ」
って、隣の美人が呟いた。
「そうそう!大体、身体がデカい奴って、蓮みたいに顔が長いよね」
「あぁ!」
友也の言葉に、蓮というイケメンが友也の胸ぐらを掴む。
「気にしてたんだ~」
苦笑いする友也に
「はいはい、蓮。その辺にしてあげて」
と、友也の健人が蓮というイケメンの腕を掴み、友也の胸ぐらから手を離す。
「はい、刺し盛りね。で、何の話?」
と、友也の隣にさりげなく立っている。
なんか……愛されてるって感じだな。
そう思いながら、ふと創さんを思い出した。
いつも、何を考えているのか分からない横顔。
多分、俺以外を近くには置いていないから、信頼はしてくれてるんだろうな……とは思う。
それとも……下僕だから?
ぼんやり考えていると
「飲み物、何にします?」
と、友也の健人が俺に微笑み掛けた。
イケメンの笑顔は、破壊力が凄い。
「あ!あの……烏龍茶で」
俯いて言うと
「え?熊さん、飲まないの?」
と、友也が俺の顔を覗き込む。
「酒……飲んだ事無いから……」
「了解、烏龍茶ね」
友也の健人はそう言うと、軽やかにカウンターへ戻ってグラスを出すと、烏龍茶を入れて戻って来た。
その間にも
「健人~、こっちにビール」
「健人~、メニュー見せて」
の声に
「はいよ」
って笑顔で答えて、俺に烏龍茶を持って来る前に、手書きのボード板をお客様に渡して、俺の前に烏龍茶を置くと、ビールを入れに戻りながら、グラスが空いているお客様に
「お客様、お飲み物はどうなさいます?」
と、声を掛けている。
周りをよく見ていて、テキパキと無駄の無い動きをしていて尊敬の眼差しで見てしまう。
思わずガン見していたらしく
「熊さん!健人は俺のですよ!」
と、友也が顔を出して来た。
「いや……、良く働くなぁ~って。友也もそうだけど、フロア担当って凄いなぁ~と思ってさ……」
ポツリと呟いた俺に、友也は照れたらしく恥ずかしそうに頭をかいた。
「友也から聞いたけど…あんたがコーヒー担当してから、客が増えたって。あんただって、自分の仕事をちゃんとしてるんじゃねぇの?」
蓮というイケメンがポツリと呟く。
「え?」
驚く俺に
「そうなんだよ!それでね、今日、熊さんとハルちゃんを引き合わせたかったのは、ハルちゃんのコーヒーを熊さんに飲ませたくて!」
と、友也が叫んだ。
「え?僕のコーヒー?」
驚く美人に
「熊さんに、ハンドドリップ式のコーヒーを飲んで欲しくて!」
そう言って友也が微笑んだ。
「ほら、うちの店。機械じゃない?俺はやっぱり、ハルちゃんみたいなハンドドリップ式が好きだなぁ~」
と続けた。
「ハンドドリップ式なんですか?」
俺が隣の美人に訊くと
「あ、うん。うちは小さなお店だからね」
と頷き
「機械には機械の良さがあるじゃないか。毎日、同じクオリティでコーヒーが飲めるんだから」
そう続けた。
「俺も教わったけどさ~、ハルちゃんみたいに上手く入れられなかった~!」
「僕はもう、20年近くやってるからね」
美人の言葉に
「え!」
って驚くと
「あ!子供の頃からって意味だよ!」
と言われてホッとした。
「物心着いた時には、お店の中に居たからね。両親に教わって、小学校の高学年から家族のコーヒーを入れてたかな?」
懐かしむように目を細めて話す美人の話を真剣に聞いていると
「熊さんは、運動を何かしてたの?」
と、蓮というイケメンが聞いて来た。
「?いや、別に」
「え?それでその筋肉?」
そう言われて
「畑仕事してたから……」
と呟くと
「あ!そうか!あの美味しい野菜!」
隣の美人と蓮というイケメンが声を揃えて叫んだ。
俺が驚くと、友也が
「熊さんにお裾分けして貰った野菜とお肉、ハルちゃん達と食べたんだ」
って微笑んだ。
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