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第23話

葉っぱだらけの俺の顔を見上げて、創さんはホッとした顔をした後 「馬鹿野郎!人間の歩く道から来いよ!熊か何かだと思っただろう!」 と怒り出した。 「すみません!早く会いたくて、近道して来ちゃいました」 頭を下げる俺に、創さんは小さく苦笑いを浮かべると俺に抱き着いた。 突然の事に固まっていると 「はじめだ……」 と、小さく創さんが呟いた。 俺もそっと創さんを抱き締めようとすると 「あ!そうだ!車で行けないならどうしょう!」 そう叫ぶと、車の後部座席を開けた。 何やら荷物がたくさん乗っている。 「えっと?」 首を傾げる俺に 「おばあ様へのお土産と、お泊まり用具1式だ」 真顔で言われて、俺は思わず吹き出す。 取り敢えず婆ちゃんへの土産を預かり、創さんの衣類はパジャマのみにしてもらった。 「明日、うちの車出しますんで」 創さんの車を、獣避け用の門を開けて中に入れてから再び南京鍵を閉めると 「随分、頑丈に鍵を掛けるんだな」 と言われて 「あぁ!獣避けです」 そう答えた俺に、創さんが顔を引き攣らせる。 舗装されて居ないでこぼこ道を歩いていると 「はじめって、車の運転出来るのか?」 と聞かれ 「はい。高3の時に取りました」 と答えると 「……だったら、車で来れば良かったんじゃないのか?」 そう言われてハッとした。 「あ!……そうですね。創さん、待ってますか?俺、車を持って来ましょうか?」 慌てる俺に、創さんは苦笑いを浮かべて 「もう良いよ!」 って答えると 「一応、スポーツシューズで来て正解だったな」 と言って並んで歩いている。 自宅の道を創さんが歩いているだけで、お洒落な並木道に見える。 創さんのペースに合わせて歩くこと1時間。 やっと到着すると 「お前…帰りは車で送れ!」 って、創さんが怒っている。 歩き慣れない道で1時間はキツかったらしい。 母屋の引き戸を開けて 「婆ちゃん、ただいま〜!」 と声を掛けると、創さんの背筋がピンっとして緊張した顔をしている。 創さんのこんな顔、初めて見た。 婆ちゃんが台所から顔を出すと 「あらまぁ!綺麗な顔をした人だね」 そう言って微笑むと 「(はじめ)がお世話になっています」 と深々とお辞儀をした。 すると創さんも深々と頭を下げて 「こちちらこそ、(はじめ)君には大変お世話になっております。高杉創と申します」 って頭を下げた。 「これはご丁寧に…」 と頭を下げあっているので 「婆ちゃん、創さんがお土産だって」 そう言って保冷バックを婆ちゃんに手渡す。 婆ちゃんは深々頭を下げて 「まあ、そんな良いのに…。大した物は出せませんが、ゆっくりして行って下さいね。(はじめ)、高杉さんをお部屋にご案内して休んでいただきなさい」 と言って微笑んだ。 創さんも婆ちゃんに笑顔を返してお辞儀すると、歩き出した俺に続いた。 「此処の離れが、俺の部屋です」 引き戸を開けて中に招き入れると 「凄いな!テレビで見た家みたいだ!」 と、目を輝かせている。 「なんで向こうじゃないんだ?」 心配そうに聞く創さんに 「あぁ…。受験で夜遅くまで勉強してた時、爺ちゃんが俺が明かりを気にして勉強しているのを見て建ててくれたんだ」 と笑顔で答えると 「え!これ、おじい様が建てたのか!」 って目を丸くした。

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