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第32話

その日、約束通りに山菜を取り、朝採りの山菜で朝食を食べた後、畑仕事を創さんに手伝ってもらった。 ばあちゃんの昼ご飯の声で休憩して、お昼ご飯を食べてから続きをやって、日が落ちる頃に風呂を沸かして泥汚れを落としてから、夕飯を食べる。 まさに原始的な生活なのに、裕福な家庭で育ってあろう創さんは文句言わずに良く働いてくれて、俺1人の作業よりも捗って助かってしまった。 創さんは今回の山菜採りで、俺に注意ばかりされたのが余程悔しかったらしく、本を片手にばあちゃんにあれこれ質問している。 ばあちゃんもそんな創さんを気に入ったらしく、2人で楽しそうに会話している。 俺がそんな2人を微笑ましく見ていると 「あ!そうだ!はじめ!今日は約束を守れよ!」 と、思い出したように叫び、夕飯の後片付けを終えてから、2人でライトを照らしながら山道を歩いた。 街中育ちの創さんにとって、田舎で経験する事全てが珍しいらしい。 朝早くに歩いた道となんら変わらないと思って歩いている俺に 「朝早くと夜遅くに歩く山道は、暗さが違うなぁ~」 って、俺の背中のシャツの裾を掴みながら呟いた。 怖いのかと思い振り返ると、創さんは子供のようにキラキラと瞳を輝かせ、楽しそうに笑っている。 そんな創さんを独り占め出来ている幸せを噛み締めていると 「はじめ、ありがとうな」 と、ポツリと呟かれた。 ちょうど今朝、愛を誓い合った場所に着いた瞬間で、思わず創さんを抱き締めていた。 地面に転がるライトの灯りが、地面の草むらに消されてしまい真っ暗になった時 「わぁ!満天の星空だ!」 創さんが俺の腕の中でそう呟いた。 俺の腕の中から、空を見上げる創さん。 俺も一緒に見上げると 「はじめ……。はじめはいつも、僕に新しい世界をくれる。本当にありがとう」 キラキラと輝く瞳で空を見上げる創さんは、どんな星より綺麗だった。 どのくらい2人で星空を眺めていただろうか? しばらくして、ゆっくりと創さんが俺から離れると、落としたライトを拾って 「帰ろうか」 って微笑んだ。 そしてそっと俺の頬に触れると 「部屋に戻ったら、はじめを抱いても良い?」 と、創さんが囁いた。 俺が、言われた意味を一瞬理解出来ずにポカンってしていると、創さんは 「まぁ、ダメって言っても抱くけどね」 って言葉を続けた。 「えっ…創さん!だって、EDなんじゃ…」 驚いて叫んだ俺に、創さんが俺の腰を抱き寄せて互いの下半身を密着させた。 すると、俺の分身に当たる硬い創さんが……。 「抱き締められて、立っちゃったよ。久しぶりだから、優しく出来ないかも」 そう言って笑う創さんの顔が滲んで見えない。 「はじめ?」 「良かった……。創さん、EDが治って良かったです。男として、辛かったですよね」 驚く創さんに、俺は泣きながらそう呟いた。 創さんは呆れたように笑うと 「分かってるのか?僕はきみに欲情してるんだよ?」 そう言うと、俺の涙を拭いながら 「これからぐちゃぐちゃになるくらい泣かせる予定なんだから、今から泣いてどうするんだよ」 って、綺麗な笑顔を浮かべて鬼畜な発言をした。 「はじめ、覚悟しとけよ」 俺を見上げて挑発的に笑う創さんの笑顔に、俺はこの後、マジにぐちゃぐちゃに泣かされるとは考えも付かなかった。

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