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第14話 二度目のヒート・5

こちらを煽るような物欲しげな視線。 普段はこういう風に、他の男のことも煽っているのだろうか。 煌々とした明かりの中で仄かに色づく千早の身体は扇情的としか言いようがない。 欲に満ちた目を向けると、千早はゾクゾクと身を震わせて、さらに顔を艶めかせた。 「はぁ、ほんとお前って筋金入りだよな。……まあ俺としても明るい方がいいけど」 嫉妬と興奮で頭の中がおかしくなりそうになりながら、高斗の視線は自然と、甘い匂いを放つ千早の首筋に向き、熱い舌を這わせた。 軽く犬歯を突き立てると、千早はひと際高い声を上げて体を弓なりにしならせた。 ここを今この場で嚙み切れば、千早と本物のつがいになれる。 彼を自分だけの物に出来る。 つがいを持ちたくないと言っていた彼の意思など全て無視して、本能のまま。 その危険な衝動を葛藤していると、千早が不意に高斗の胸を押し返した。 「ひぁっ…、か、噛んじゃ、だめ……っ」 噛まないで、と懇願され、高斗はズキリとした胸の痛みを感じながら、寸前のところで首筋に埋めていた顔を上げた。 「噛まねーよ。最後まで理性が持てば、な」 首筋の下の鎖骨に軽く歯形を付けて危険な衝動をまぎ合わせていると、彼の桜色の胸の突起がぴんと勃ちあがっていることに気づき、指先で弄った。 「ここ、ビンビンになってるな」 「ひっ、あぁ……っ」 過剰なぐらいの反応に、高斗は思わず笑った。 「すげーな。涎出てる。そんなにここ触られるのが好き?」 「や、言わない、で…っ」 耳元で囁くと、千早は赤くなった顔を見せまいと両手で顔を覆ったので、高斗はその手をそっと外した。 千早の反応はいつも初々しくて、経験豊富とは言い難い。だが、高斗とももう幾度となくセックスをしているはずだ。 抱く度に、こういう反応をされたら、他の男達もたまらないだろう。 「体まで真っ赤だ。明るいところで見られるのが好きっていう変態の割に随分シャイだな」 「ち、が…っ、あっ、うっ……っ」 嫉妬からくる加虐心だろうか。 意地の悪い気持ちが沸き上がってきて、彼の弱点ばかりを弄り倒していると、千早はいやいやするように首を横に振り、汗を含んだ黒髪がぱさぱさと音を立てた。 「……っ、そこ、ばっか、やめ……っ、ああっ」 生理的な涙でいっぱいになった黒目勝ちの瞳で、やだ、と懇願されると、高斗はその凶悪的な可愛さに思わず呻いた。 「……千早、ほんと可愛い、なんなんだよお前…」 衝動に突き動かされるように思わず荒っぽくキスをした。 ついばむだけのキスでは足りずに、その小さな唇を舌で割って中に突き入れ、荒々しく中を夢中で貪った。 「んっ……くっ、ん……ぅっ」 (ん……?) ビクッと時折肩を震わせていた千早の反応が途中から一切なくなり、異変に気付いて唇を離すと、千早の顔は酸欠で真っ赤になっており、苦しげに咳き込んで肩で息をした。 「……はぁっ、はあっ」 「まさかキスしたことないのか? 誰彼構わず寝てるのに?」 千早は高斗の戸惑いを感じ取ると、少し気まずげに顔を逸らしながら言った。 「……そんなの、寝る時にする必要、なくないですか」 「普通マナーとしてするだろ」 「気持ちいいからセックスしてるだけで、別に好きな相手でもないのにしません」 つまり、高斗も好きな相手ではないと言うことだということに理不尽な怒りが募るが、今までキスをしたことがないということは、好きな人自体がいたとがないのだろうと思い至り少しだけ安堵した。 しかしキスもしないなんて、体目当ての輩としかセックスしていないのかと思ったが、高斗自身、千早とキスしたのは初めてだということに気づき、少しバツが悪くなった。 ああでもそうか。 キスだけは、高斗が千早にとって、本当に初めての相手だったのだ。 千早の言う通り高斗もこれまでずっと、キスなどセックスに不要だと思っていた。 女を抱くときに口紅がべっとりと付くのがむしろ不快で、潔癖の気がある高斗には耐えがたく、〝マナー〟として、求められたらするぐらいだった。 だが、千早には無性にキスがしたかった。好きな相手とはキスがしたい。 「キスは気持ちいいんだよ。教えてやろうか?」 「……どーぞ」 投げやりな言い方だったが、千早の顔は緊張に強張っていて、それがひどく可愛らしい。 身構えるように両手でシーツを掴んでいるのを一本ずつ指を開き、その手に自分の手を絡ませる。 「大丈夫、今度は苦しくないようにするから」 本当は荒っぽく噛みつくようにキスをしたくなるのを堪えて、ゆっくりと唇を重ね合わせるのを繰り返すと、千早も引き結んでいた唇を緩く開き、高斗に答えた。

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