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第15話 告白・2

(ほんと……綺麗な体) 染み一つない体は陶器のようで、やはりこの肌が赤剥けるのは見たくないと、高斗は日焼け止めを両手に塗り込み、丁寧に塗って言った。 相変わらず、手に吸い付くような触り心地でつい無駄にあちこち触りたくなってしまうが、変なことはしないと宣言した以上は真面目に塗っていた。 だが、背筋から腰にかけて手を滑らせた時、千早がビクッと体を跳ねさせた。 「ひゃ、あっ……、ちょっと、変なことはしないって言ったじゃないですか」 「ふ、普通に塗ってるだけだぞ?」 「え……」 (ああそうか。この辺性感帯だよな……マジこいつ敏感) ムラッと来るが、こんなところで盛って万が一セックスなどして海に入れなくなった日には、旅行中口を利いてもらえなくなる。 千早は、高斗がわざと変な塗り方をした訳ではないと分かると、「すみません」と謝罪し、恥ずかしそうに目を逸らして、誤魔化すように海を見つめた。 「……こんなに綺麗な海なのに、僕たちで独り占めなんて、ちょっともったいないですね」 普段は旅館に泊まる客が全員泳げるが、貸し切り料金を支払って予約しておくと、時間は限られるものの、完全に貸し切りにすることが出来た。 「当たり前だろ。千早の裸は他の奴に見せられない」 「裸じゃなくて水着ですけど……?」 「同じことだ。肌の表面積の70%以上出てるんだから」 「………??」 千早は首を捻ってやや引き気味に閉口し、「高斗さんは変」とはっきり呟いた。 ようやく日焼け止めを塗り終わると、千早は早く早くと急かすように高斗を波打ち際に連れて行った。 「見てください。水、綺麗すぎませんか? 向こうの方なんて、グリーンですよ!」 入り江の奥の小さなビーチは、両側に森があり、その緑が日差しに反射して、水面も美しい翡翠色に染まったように見える。 その向こうはどこまでも青い海で、入道雲が夏空への巨大な階段のように立ち上っている。 千早はしゃがみ込み、落ちていた巻貝を拾いあげて耳に当てた。 「こうすると波の音が聞こえるって、本当ですか?」 「さあ、俺は聞いたことがないけど、どうだ? 聞こえるか?」 千早は黙り込み、耳を澄ませていた。 無言になると、ただ波の音と、遠くの蝉の鳴き声しか聞こえない、本当に静かな空間だった。 結局、契約期間の延長の説得が出来ないまま、共に暮らせることが確定しているのは、残すところあと二週間。 そのせいだろうか。 黙り込んでその美しい景色を眺めていると、どこか感傷的な気分になった。 千早に偽装のつがい契約を結ぶように頼んだのがつい昨日のように感じた。

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