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四十二話 甘美な指先
ひとしきり楽しそうに観察を終えると、康一は使い捨てのローションパックを開けて手のひらに取り出した。ぬるぬるするローションを手に馴染ませ、尻の方へ手をやる。指先が、窄まりに押し当てられた。
「挿れますね」
「っ……」
つぷんと、指先が穴に埋まる。ローションの滑りを借りて指の付け根までぬぷーっと押し入れられた。指が中で動く。康一はにゅぷぬぷと指を出し入れしながら、指をコの字に曲げたり腸壁を擦るように刺激していく。
じゅぷじゅぷと音がする。ローションと腸液が混ざって、濡れた音が響く。
「んっ、く……、ふっ……」
少しずつ解され、もどかしい快楽が下半身を襲う。直接性器に触れない快楽は、もっと激しくして欲しいような気持ちにさせられた。指が増え、掻き乱される感覚が酷くなっても、決定的な快感には至らない。
じっとりと、額に汗が浮く。次第にだらしがなく脚が開いて行く。
「うっ、ん……、はぁ……っ、はっ……」
俺ばかり息が上がっている。康一はじゅぷじゅぷと指を動かし、時々穴を拡げるように指を開いて見せた。
「感じてます?」
「っ、んっ……!」
そんなこと、見れば解るだろうに。俺が浅く呼吸をしながら熱っぽい目で康一を見ると、康一は指をぐりっと動かして、コリコリした部分を刺激した。
「んんっ!」
一瞬、息が詰まりそうな快感が痺れとなって突き抜けた。反射的に唇から唾液が溢れる。
「あ、あっ……」
「悦くしてあげますね」
「っ、や……、ああっ!」
指がグリグリと前立腺を刺激する。激しい快感に、脚がシーツを蹴って空を掻いた。
「いぅっ! あ、あっ……!」
「良い声で鳴いてくれますね」
意地悪な声に、唇を噛む。だが、激しい刺激に一瞬も持たず喘ぎ声が口をつく。
「あーっ、あっ、あ、あっ……!」
知らず、涙が滲む。何度もそこばかりせめられて、おかしくなってしまう。
「あっ、あ、康……一っ、さんっ!」
甘く切ない息を吐き出したところで、康一はずるっと指を引き抜いた。
「く、んっ……!」
中でまだ指が蠢いているようだ。きゅんきゅんと穴が勝手に閉じたり開いたりしているのが解る。
ハァハァと息を吐きながら、康一を見る。康一は少しだけ余裕無さそうに微笑んで、コンドームを装着した。
「寛之さん……、すごく、欲しそうな顔、してますね」
その言葉に、ゾクッと背筋が粟立つ。言い当てられたようで恥ずかしい。顔を隠したかったが、手で覆おうにも手錠が邪魔して出来ずに、僅かに顔を背ける。それをさせまいとするように、康一は俺の顎を掴んで乱暴にキスをした。
「今度は、こっちで可愛がってあげますね……」
そう言いながら、康一は肉棒の先をアナルに押し当てた。わざと焦らすように、先の方でくちゅくちゅと敏感な表面を擦られる。
「う、んっ……、ぁ」
切なくて腰を捻り、甘い愛撫に陶酔する。
(はや、くっ……)
早く康一の肉棒で、中を掻き乱して欲しい。滅茶苦茶に突き上げられても良い。アナルばかり弄くられ、限界だ。自分では触れられない状況が、余計にそうさせる。
「……欲しいですか?」
解っているくせに、俺をこんなにしたのは、康一のくせに。まだ残っている理性が、酷く羞恥心を煽られる。それでも、言わなければくれないのだと思うと、選択肢はない。
「ほ、欲しいっ……です…。挿れ、て……康一さん、の……」
言い終わるか否かと言うところで、尖端で解されたアナルを虐めていた肉棒が、じゅぷんっ! と一気に中へと入ってきた。
抉られるような感覚に、圧迫感同時に激しい快楽が腰から脳を突き上げる。
「―――っ!!」
ドクドクと、繋がった箇所が脈打つ。腸内が脈打っているのか、康一のペニスなのか。あるいは、両方か。
じんじんと、肉を割り開かれた痛みが後から響いてくる。尻に康一の腿が当たった。深く突き刺さったまま、楔のように穿たれてしまった。
「あ―――、んぅ……」
「寛之さんは、美味しそうに咥えてくれますね」
「っ……」
揶揄するような康一の声に、文句を言いたかったのに、何故か言葉は出てこなかった。
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