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第17話

「市の相談所に、僕だけで行ってくるよ。昼休みのタイミングに合うようにする。君とすぐに電話をかわれるように」  優也の言葉に僕は凍りついた。  優也は今年、学年の優待生に選ばれている。  優待生は学年で一人しか選ばれない。  もちろん、Fランなどとは冗談でも言えない物理のクラスなども含めて一人だ。  今年、物理ではなくFランの情報の奴が選ばれたと、物理の奴らは最初、大騒ぎしたらしい。  が、物理と合流する第二外国語の授業で、難しいアラビア語を選択して同じ授業を選択した同級生に勉強を教えるのが講師より上手く、ロシア語は独学で既に習得済みだと物理の奴らは優也の存在に驚いたそうだ。  その後に、山本先生が優也は物理を首席で受かっていたけど、サッカー部に入りたいから情報を選んだと聞いて、それからは宇宙人扱いされている。  入学金の免除、授業料半額、短期の交換留学生制度で、優先的に選ばれるなど優待生になると、様々な恩恵が受けられる。  授業を休んだら、来年の優也の評価が下がるんじゃないか?  僕のせいで。 「僕が自分で行くよ」 「君、勝手に出かけられないし、授業時間に抜けだしたら、単位が足りなくなるんじゃないかな? 君のお母さんは単位が足りるように計算して休ませてるのかもしれない」  優也の言う事は当たっている気がした。  どの科目が何日出れば単位が足りるか、母さんは部屋のボードに貼り付けて、横にカレンダーをぶら下げている。  僕の出席日数を授業ごとに数えているのだ。 「けど、そうしたら、学校での優也の評価が下がるんじゃないかな? そこまでしてもらうわけには……」 「そこまでできなったら、僕の存在って春樹にとって無価値だと思うんだ。ただでさえ、同性なのに……」  優也は同性だけど、リーダーシップを発揮してる町田とか、面白イケメンの宮下とかが狙っていて、学校の上級生のお姉さんからも手紙をもらう事があり、かなりモテるらしい。  僕にそこまでしてくれなくっていいんじゃないかな?  そこまで甘えきってたら、気が付いたら、優也は誰かにとられていなくなって、僕一人で泣いてるんじゃないかな? 「春樹? 勝手に電話して、こっそり家を抜け出したりしたらダメだよ!」  優也に考えを見透かされた⁉  けど、今回は本当にムリっぽい。  竹内が同行してくれるわけでもないし。  同行者ナシで、遠くの役所まで行くなんて優也以前に、親の雷が落ちるだろう。 「それでも、病院の事は僕の問題だよ。別れたら他人になってしまう人にそんな事、お願いできない」 「別れたらとかじゃないんだ。単なる友達だろうが、たまたま学年が一緒だっただけの奴だろうが、上級生だろうが、困ってる人を見捨てたらその方が僕は後悔すると思うんだ」  ……そういう奴だった、優也は。  自分の経歴にキズが付くとかより、困ってる人を見捨てられないんだ。  それが、その時付き合ってた人なら、一生後悔するんだろう。 「……分かったよ。君にお願いする」  僕は優也に何を返せばいいだろう。  ありがとうって言葉だろうか?  そんな簡単な事で済ませていい事なんだろうか? 「君はそこまでして、何を相手に求めてるの?」 「ひとりにしないでって思ってる!」  面倒くさい奴なんだな。  僕は多少面倒くさい奴の方が、分かりやすくて良いと思うけど。

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