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第16話

「罰ゲームは楽しそうだね? あれだけ嫌がってったのに?」 「おかげさまで」  家に帰ろうとしたら、途中にある学校のグラウンドで、石田と優也が部活をサボって話していた。  罰ゲームは楽しそう……。 「は、春樹……?」 「いたんだー?」  優也は焦っているけど、石田はニタニタと笑っている。 「そういえば、罰ゲームがどうのこうの、君たち言ってたね……僕に告白する直前に」 「ま、待って。春樹! 好きな人に告白するっていう罰ゲームだから! 状況的に、OKもらえる率がすごく低いと思ったから、嫌がったんだよ!」 「言い訳するねー」 「言い訳じゃなくって、事実を言ってるだけ!」  そういえば石田って、竹内と付き合ってるのに、僕と二股かけようとしたんだよな。  石田の言う事は鵜呑(うの)みにしないようにしよう。  今の発言も、僕がいるの気付いてたな。  こいつ、後ろにも目が付いているのか……?  三日後にまた、石田と優也がグラウンドで喋っていた。 「優也は西田のどこがスキなんだ?」 「匂いかなー」 「ああ。美容院で、一番高いコースを月1だな、あれ。髪がさらさらしてるし、甘い匂いがする」 「髪だけじゃないんだー。少し汗をかいた時にすごくカワイイ匂いがするんだよ!」 「変態じゃん! 高2の時から西田をストーカーしてて、カワイイ匂いがするとか、おまえ、おかしい奴じゃん!」 「何を話しているのかな? 僕もまぜてほしいな。匂いが好みって、運命の番だね!」  僕と一緒にいた竹内が石田と優也に話しかけた。  最初、優也は動揺していた感じだったけど、開き直った。 「運命の番ってナニ? 結婚できる相手ってこと? なら、そうだね!」  今度は僕が動揺する番だった。  無垢な優也にマニアックな言葉を教えるな、竹内! 「そうでもあり、他の相手に奪われてしまうこともある。惹かれ合う相手って意味だよ」 「なるほどー」  優也は納得した様子だった。  翌朝に、竹内がどっさりと本を持ってくる。  中身がオメガバースなので、見えないように真っ黒な袋に入れてある。 「これ、春樹が読みたがってた本!」 「ありがと! 竹内、学費を払うの大変そうなのに、本代までこんなに……」 「学費は親が払ってくれてるよ? バイト代は本台と、CD代と、DVD代と、夏の陣と冬の陣とでなくなる」 「……人生って悲しいよな。BLに貢ぐ日々……」 「悲しくはないよ。僕の人生は充実してる!」  そこへ、目の下にクマを作った優也が現れた。 「おはよう、優也」 「待って、春樹! それ、エロ本でしょ⁉」 「え? エロ本ってナニ……?」  オメガバースは確かにエロいシーンもあるけど、エロ本と違うし、僕は読んでも別に興奮してないし!  感動したり、きゅんとはなるけど。 「運命の番って書いてある本を買ったら、全部エロ本だった……!」 「お、落ち着いて、大塚。別に僕ら、これで抜いてないから!」 「そ、そうだよ! 朝からエロ本とか、どうしたの?」 「男が素っ裸だし、乱暴されてるし、どう見てもエロ本じゃん!」  ……優也にはオメガバースがエロ本に見えたらしい。 「ファンタジーなんだよ!」 「相手と結ばれるまでのストーリーや、社会の雰囲気とかも楽しむものなんだよ! 芸術!」 「そう言って僕と春樹を騙す気だね! 竹内、春樹にこんなの見せないで!」 「いくら読んでも、春樹の個人的な恋愛にはみじんも影響しないよ?」 「けど……! こんなシーンのある本、18歳になるまで読んだらダメだと思ってた……」 「君、もう18歳だよね? どうしてそんなに否定的なの?」  僕は優也のあまりの過剰反応に驚きながら尋ねる。 「先々月まで17だったけど?」 「ええー!? 三月生まれ……?」  優也ってお子様だったのか。 「残念だけど、僕、来月には19になるんだ!」  調子に乗って言ってみた。 「ウソー! 春樹の方が誕生日が早いんだろうなって思ってたけど、そんなに……イヤだ! 春樹の方が年上なんて!」  優也の無垢な目が傷ついたように潤むのはいつもの事だが、何だかとんでもない事になりそうな気配がした。 「僕、家庭裁判所に行って、五月生まれにする!」 「おい。優也! 気は確かか⁉ 実際に五月生まれじゃないと、五月生まれに戸籍を弄る事はできんぞ! こんな来月19歳になるおっさん、捨ててしまえ!」  町田が正論だか、正論じゃないのかよく分からないことを言いだす。 「イヤだ! 僕、春樹と結婚するんだ!」 「大塚。一歳弱しか変わらないなんて、そんなの結婚するのに何も問題はないよ。それより同性なのの方が問題じゃないかな?」 「……そうかもしれないね。性別変更か……」  竹内の正論に、ようやく優也の乱心は収まった。はずだよね……?

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