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第19話(優也視点)

 春樹に大体の事は電話で報告した。  翌日、病院を一緒に調べようとしたら彼は休み。  熱を出したらしい。  知恵熱だろうかと戸惑う。  春樹は本当に転院を望んでいるのか?  僕が気が付いていないだけで、春樹は何か別のサインを出したりはしていないか?  分からない……。  休んでいた時の分のノートを見せてもらおうと、石田に声をかけようとしたら、竹内と無言で教室を出て行ってしまう。  取り込み中?  石田のノートが分かりやすいんだけど、町田にお願いするか……いや、あいつにはあんまり借りを作りたくないな。  無難に佐藤に頼むか。  考えていると、聞いたこともないような竹内の怒鳴り声が聞こえてきた。 「何回目だよ! 何回やれば、気が済むんだよ!」 「許して……佑月(ゆづき)! もうしないから」  そういえば、石田は竹内があのグロテスクな本を春樹に貸してる事を知ってるんだな。  何か弱みを握られているのか?  せっかくなので、普段情報をもらってる竹内だけでなく、石田からも春樹の情報を引き出せないか二人を追ってみる事にした。  廊下を出て、校舎を突きあたりまで進むと、土下座する石田と彼を足蹴にする竹内の姿があった。 「あの……」 「春樹は今日、休みだから!」 「助けて! 優也。僕の代わりに竹内に謝って……」 「何したの?」 「浮気!」  竹内の言葉に、石田は(こうべ)を垂れる。 「何回目って……まだ六月だよね? 二か月ほどしか付き合ってないよね……?」 「ほら?」  竹内に腹部を足で突かれて、石田は真っ青な顔をしている。  力で勝てない相手ではない。 「だって、もう二か月だ! まだ一回もなんて……ふぐっ……!」 「不潔……」  僕は汚いものを見る目で石田を見た。 「同感だね」 「なら、おまえらで付き合えよ! 春樹をよこせ!」 「断る!」 「優也が……僕、春樹が好きなんだ♡ みんな、春樹は狙わないでね♡ とか入学早々部活で言ったから譲ったのに……」 「ひどい……」  竹内の目に涙が溜まっていく。  どういう神経をしてるんだ、石田は。  春樹を口説いたのは、二股をかけるつもりはなくて、口説くの成功したら竹内を捨てる気だったのか……。  ゲスすぎる。 「君、最低だよ! ゴミクズだよ!」 「そうか? 西田は最初、僕に気があったみたいなのに、優也がけん制するから、口説けなくなったんだよ!」 「え? それ、本当……?」  竹内の目から涙が零れ落ちる。 「石田ってカッコいいねって二人で話した事はあった。春樹が奥手だから、しびれを切らした僕が先に石田に手紙を送って付き合う事に……」 「ごめんね。堂々と勝負する機会を奪ってごめんね」  僕は竹内に謝るしかない。 「大塚は関係ないよ。むしろ、石田より大塚の方が上になっちゃったから、大塚と石田と二人で同時に告白したら、大塚が選ばれてるよ」  竹内の見解は?だ。  春樹はあんまり僕を気に入ってくれていない。  なぜだか分からないけど、他の奴で実験したモテテクは全て春樹には無効だった。  むしろ、やればやるほど、嫌われていった気が……。 「あれ? 大塚、どこ行くの?」 「ちょっと、気分が悪くなっちゃって……」  落ち着け。  今、春樹と付き合ってるのは僕だ。  一回付き合ったら、そんなに簡単に略奪できないはず。  僕はカバンの奥底に沈み込んでいたうつ病の頓服薬を久々に取り出した。  本当はいけないんだけど、お茶で頓服を飲み、気分を落ちつかせる。 「大塚……」  気が付くと、竹内が僕を追ってきていた。 「竹内? 授業始まっちゃうよ?」 「大塚。石田の話、話半分に聞いてね。春樹は石田の事なんか、好きじゃないよ」 「けど、僕からすぐ視線を逸らすし、ラインも春樹から送ってこない……」 「春樹は怖いんだよ。良い男と付き合ったら、捨てられた時に精神が保てなくなるのから距離をとって心を守ろうとしてる。だから、あんなクズと付き合おうなんて考えるんだよ。石田に捨てられても、大してダメージを受けないの、無自覚に理解してるんだろうな。あんな地雷物件、選ぶんじゃなかったな……」 「どうして、別れないの?」 「僕が地雷物件マニアだからかな?」 「お互い辛いね」 「うん。けど、頑張るしかないね」 「ありがとう」  やっぱり、竹内は良い奴だ。  趣味はすごく悪いけど。

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