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第1話

 放課後の、人気のない夕日に染まる校舎裏に七々音(ななと)はいた。目の前には、校内で可愛いと噂の同級生の女の子。 「好きなの、七々音くん。私と付き合って」  彼女いない歴=年齢の七々音の心は、その言葉に歓喜した。  呼び出されたとき、もしや、とは思ったけれどあまり期待はしていなかった。  七々音はなかなかに可愛い顔立ちをしている。女子の友達も多い。けれど、友達止まりなのだ。彼氏にはしたいと思われない。女子は七々音を可愛い小動物のように扱い、全く男として意識していない。そしてそんな彼女達を、七々音も友達としてしか見られなかった。  女の子を可愛いと思うし、好きだし彼女は欲しいけれど、親しくはなれても恋人には進展しない。そんな状況のまま今日まで過ごしてきた。  だからまさか本当に告白されるだなんて、思っていなかったのだ。  女友達は多いけれど、告白されるのははじめての七々音は真っ赤になってどぎまぎする。  なにも言わない七々音に、彼女は不安げに顔を曇らせた。 「だめ、かな……?」 「まさか!」  食いぎみに否定する。  もちろん返事はイエスだ。これで漸く、彼女いない歴更新を止められる。  今すぐにでも返事をしたいのに、緊張してうまく言葉が出てこないのだ。  ごくりと唾を飲み込み、口を開いた瞬間、 「だめーーーー!!」  叫び声と共に、目の前に男が現れた。  七々音はぎょっと目を剥く。彼は今、どこから現れたのだろう。上から降ってきたように見えたのは見間違いだろうか。  すらりと背の高い、七々音よりも少し年上に見える青年が、必死の形相でこちらを見下ろしている。  そんな表情だけれど、彼の顔はやたらと整っていた。人間離れした美貌で、キラキラと輝いて見える。そして彼の背中に純白の羽が見えるけれど、それはきっと幻覚だろう。天使のように綺麗だから、天使のように見えるのだ。これが脳の錯覚というやつだ。  突然現れた美しい青年を、七々音はぽかんと見上げた。 「ダメだよ、七々音! こんな女と付き合うなんて!」  青年は、七々音に告白してきた女子を指差して言った。  青年に見惚れていた女子生徒は、その物言いにひくりと頬を引きつらせる。  七々音に告白してくれた貴重な女の子になんてことを言うのだろう。 「な、なんだよ、お前……」  きっとこの青年は七々音と違いモテモテで、今まで散々女遊びをしてきたのだろう。だからそんなことが言えるのだ。  ムッとする七々音に、青年は捲し立てるように言う。 「こんな女と付き合ったらろくなことにならないよ!」 「なんでお前にそんなこと言われなきゃならないんだよ!」 「七々音の為を思って言ってるんだよ! こんなビッチと付き合ったら、めちゃくちゃに弄ばれてヤり捨てられるだけだよ! そんなの絶対許せない! 僕の七々音が、七々音の純潔が、こんなヤリマン尻軽クソビッチに奪われるなんて耐えられない!」  あまりの暴言に七々音は言葉を失う。  暴言を吐かれた女子生徒は、顔を真っ赤にしてぶるぶると肩を震わせていた。  その様子を見て、七々音はおろおろと口を開く。 「お、お、おま、な、なんてこと言うんだよ、謝れよ……!」 「僕は事実を言っただけだよ。目を覚まして、七々音。はじめて告白されて舞い上がってるのはわかるけど、初心で童貞の七々音が生まれてはじめて女の子に告白されて喜んじゃうのはわかるけど、こんなビッチと付き合っちゃダメだよ。純情そうな振りして、心の中ではどうやって童貞の七々音を食ってやろうかって、そんなことしか考えてない女だよ。そんなの女にずっと大切に見守ってきた可愛い七々音の純潔を奪われるなんて、絶対絶対嫌だ!!」  子供が駄々をこねるかのように叫んで、ガクガクと七々音の肩を揺さぶる。 「いい加減にしてよ!!」  それまでなにも言えずにいた女子生徒が、我慢の限界を迎えたようだ。  大声を上げ、こちらを睨み付ける彼女に七々音は怯えた。憎悪すら感じる視線にあわあわする。 「あ、あの……」 「もういい。私、帰る」 「えっ……。で、でも、まだ、返事……」 「いらない。さっきの聞かなかったことにして」 「ええっ……」 「じゃあね、さよなら」  冷たく吐き捨て、彼女は一度も振り返らずに去っていく。  七々音は呆然とそれを見送ることしかできなかった。 「よかった。七々音を守れて」  ほう……と安堵の息を漏らす青年に、一気に怒りが沸き上がる。  肩を掴む彼の手を力いっぱいはね除けた。 「なんてことしてくれんだよ、このクソ野郎!!」  頭に血が上り、感情のままに言葉を吐き出す。 「せっかく告白してくれたのに! お前のせいで俺がフラれたみたいになったじゃねーか! お前が邪魔しなきゃ、あの子と付き合えたのに! どうしてくれんだ、バカアホイケメン滅びろ!」 「えっ、七々音、僕のことカッコいいって思ってくれてるの?」  ポッと頬を染めて嬉しそうに口元を緩める青年に、更に怒りが募った。 「そんなこと言ってねーだろ!」 「だってイケメンって」 「うるせー! なんなんだよ、お前! っていうか誰だよお前!」  よくよく考えれば、本当に誰なのだろう。七々音にこんな美形の知り合いはいない。初対面のはずだ。それなのに彼は七々音の名前を知っていた。七々音のことを前から知っているように色々と言ってくる。童貞だとか、告白されたのがはじめてだとか、なぜそんなことをこの青年が知っているのだ。  突然現れて、好き勝手言いまくってめちゃくちゃに引っ掻き回して七々音とあの子の恋路の邪魔をした。だが、それはなんのためなのだろう。  今更ながら、この青年の怪しさに気づいた。驚きと怒りで冷静に考えられずにいたが、怪しすぎるではないか。背中の羽の幻覚は未だに消えないし。学校の関係者には見えない、どう考えても不審者だ。  胡乱げな視線を向ける七々音に、彼はにっこりと微笑んだ。 「僕は真白(ましろ)。天使だよ」  やはり不審者だ。頭のおかしいヤバい奴なのだ。  天使と名乗るということは、背中の羽は幻覚ではなく作り物を背負っているのだろう。本格的な不審者だ。  七々音は無言で背を向けて歩きだした。 「あっ、待ってよ、七々音~」  真白と名乗った青年は追いかけてくる。  ついてくるな、と怒鳴りたいが、相手は不審者だ。下手に刺激するとなにをしてくるかわからない。既に散々怒鳴り散らしたあとだけれど。  七々音は無視して早足で彼から離れる。しかし真白はついてくる。  七々音は走り出した。全力疾走で彼を引き離し、家に着く頃にはへろへろになっていた。  けれど無事に不審者を撒くことができた。  ぜいぜいと息を切らせながら、家の中に入る。親は仕事でいないので、まっすぐに自室へと向かった。  部屋のドアを開けた瞬間、七々音は叫んだ。 「うわあああぁ!!」  部屋の真ん中に、撒いたはずの不審者が立っていたのだ。恐怖体験が見せる幻覚かと、ごしごしと目を擦るが彼の姿が消えることはなかった。 「な、なん、なん、なん……っ」 「おかえりー、七々音」  青ざめる七々音に、真白はにこにこと朗らかに笑う。笑顔が余計に怖い。 「なんで、ここに……どうして、どうやって入ったんだよ!」 「僕は天使だからね。こんなの簡単だよ」  胸を張る不審者に、七々音は震える手でスマホに手を伸ばす。  この青年は上級の不審者だ。とても自分の手には負えない。警察に助けを求めなければ。  しかし焦るあまり、手が滑ってスマホを落としてしまう。  床を滑るスマホを、真白が拾い上げた。 「あっ……」 「今は僕と話してるんだから、こんなの弄っちゃダメだよ」 「か、返せよ……っ」 「だーめ。人と話してるときにスマホなんて、相手に失礼でしょ」  不審者に常識的なことを言われると無性に腹が立つ。不法侵入の犯罪者に言われたくはない。  七々音はキッと真白を睨み付ける。 「なんなんだよ……なにが目的だ……!」 「七々音が心配なんだ。純粋無垢な七々音は可愛いけど、いつあばずれに騙されて童貞を奪われちゃうか、気が気じゃないよ」  やはりこの不審者の言っていることが全く理解できない。  頭が痛くなり、七々音はこめかみを押さえた。 「まず、なんでお前は俺の名前を知ってるんだよ」 「そりゃあ、七々音が生まれたときから七々音を見守ってきたからね。名前だけじゃなくて、七々音のことならなんでも知ってるよ」  得意気にどや顔する真白に、ぞわっと悪寒が走った。  この不審者の正体は、もしや七々音のストーカーだったのだろうか。ただのストーカーでも嫌なのに、天使を名乗るストーカーなんて、完全に頭のおかしい奴ではないか。  警戒心を募らせる七々音に、真白は笑顔で話を続ける。 「僕たち天使は、一人一人人間を見守っているんだよ。この世に生まれ落ちた瞬間からね。ずーっと片時も離れず見守り続けて、その人間が寿命を迎えたとき、魂を天界まで送り届ける。それが天使の仕事なんだ」  七々音は遠い目をして話を聞いていた。  正直、どうしたらいいのかわからなかった。スマホは奪われてしまった。今すぐここから逃げ出して、警察に駆け込むべきだろうか。でも、先回りして平然と不法侵入を果たすような相手だ。警察に駆け込む前に捕まる可能性が高い。そして捕まってしまえば、逃げた七々音に逆上して襲いかかってくるかもしれない。  しかし同じ空間にいるのも怖い。  身動きが取れずにいる七々音に構わず、聞いてもいないのに真白はペラペラといらない説明を聞かせてくる。 「僕は新米の天使で、七々音が僕のはじめての担当なんだ。七々音がこの世に誕生した瞬間に立ち会って、天使よりも天使のように愛らしい七々音を一目見た瞬間から、七々音のことを一生見守り続けるって心に誓ったんだよ」 「……っつーか、見守ってなくないか? なんで見守るのが仕事なのにしゃしゃり出てきてんだよ」  思わず突っ込んでしまった。しかしこの矛盾は見過ごせない。自分で設定を考えたなら、きちんとそれに則って行動するべきだ。頭のおかしいストーカーに言っても通じないかもしれないが。 「だってそれは、七々音があんな尻軽あばずれビッチと付き合おうとするから!」 「やめろよ、そういうこと言うの! 最低だぞ!」 「あの女は童貞食いの雌豚なんだよ! 童貞を食いまくってるビッチなんだ! 童貞を美味しくいただいて、軽く遊んで飽きたら捨てるあばずれだよ! あんな女と付き合ったら、七々音なんてめちゃくちゃに蹂躙されてボロ雑巾みたいにすぐに捨てられちゃうよ!」 「適当なこと言うなよ! あんな純情そうな女の子が、そんな……」 「ほら、騙されてる! 騙されやすいのが七々音の可愛いところでもあるけど、七々音が純潔を奪われてボロボロに陵辱されてずたぼろに傷つけられてショックのあまり廃人のような人生を送ることになるなんて、そんなの黙って見ていることなんてできないよ!」 「いや、さすがにそんなことにはならないだろ……」 「大体、七々音は自慰だって満足にできないでしょ!」 「んなっ……!?」  とんでもないことを言われ、七々音は真っ赤になって絶句する。 「初心でエッチなことに疎い恥ずかしがり屋の七々音は、父親にも友達にも自慰のやり方を訊けなくて、自分で調べることもできなくて、周りの下ネタを聞き齧っただけでよくわからないままオナニーして、でも全然うまくできなくてもどかしくて泣いちゃいそうになって」 「うぎゃあああ!! やめろおおぉ!!」 「泣きそうな顔で真っ赤になっておちんちん握ってる七々音はそりゃあもう頭がおかしくなりそうなくらい可愛くて可愛くて僕が七々音のおちんちんくちゅくちゅ扱いてぺろぺろ舐めてしゃぶってエッチなミルクを啜ってあげたくなるくらい愛らしいけど」 「うっとりしながらキモいこと言うなああぁ!!」 「でもあの童貞食いの女は、きっと七々音のこと嘲笑って貶すに決まってるよ! そんなことされたら、繊細な七々音はトラウマになって不能になっちゃうよ! そんなの絶対ダメだよ! 七々音の可愛いおちんちんが、まだ僕が七々音のエッチなミルクを味わってないのに勃たなくなっちゃうなんて!」 「もうやめろおぉ……!!」  七々音は誰にも知られていないはずの己の秘密を暴かれ精神に多大なるダメージを負った。  確かに七々音は自慰が下手だ。なんとなく耳に入ってきた情報を頼りに行っているため、正しいのかもわからず、かといって誰かに訊くことも自分で調べることもできず今日まで過ごしてきた。  それを、なぜこの男が知っているのだ。  この男はストーカーだ。部屋にカメラを仕掛けられているのかもしれない。  思わず部屋の中をキョロキョロと見回す。  己の恥を指摘された羞恥に涙を滲ませる七々音の肩を、真白が優しく撫でた。 「泣かないで、七々音。もう大丈夫。七々音の純潔は僕が守るからね」  七々音は彼の手を振り払った。  激しい羞恥は怒りへと変化する。 「うるせえぇ!! 余計なお世話なんだよ! 俺が誰とどうなって廃人になろうがヤリチンになろうがお前に関係ねーだろーがああぁ!!」 「か、関係ない……!?」  真白はカッと目を見開く。 「関係なくないよ! 僕は七々音が生まれたときからずっと見守ってきたんだよ! 可愛くて可愛くて目に入れても痛くない食べちゃいたいくらい可愛い七々音をぺろぺろすりすりなでなではむはむしたいのを我慢してずぅーっと見守り続けてきたんだよ! それなのにぽっと出の七々音のこと愛してもいないクソビッチに僕が今まで大切に大切に見守ってきた七々音の大事な大事な童貞を奪われるなんて冗談じゃないよ!」  興奮した真白に大声で捲し立てられる。その内容に七々音はドン引きだ。 「あんな女にくれてやるために、見守ってきたんじゃない……」  真白の目が据わっている。  様子がおかしいことに気付き、七々音は嫌な予感に襲われた。  咄嗟に逃げようとする七々音の腕が、それを見越したように素早く掴まれる。 「七々音を一番に愛してるのは僕なのに……あんな女に奪われるくらいなら……そうだ、七々音はこんなに可愛いんだ、あんな女一人追い払ったって意味ない……放っておいたら、きっとその辺の変態に襲われてめちゃくちゃにされちゃう……」  ぶつぶつと呟く真白の異様な雰囲気に、ぞわりと寒気に襲われる。  逃げたいのに、ガッチリと腕を掴まれ振りほどけない。 「それならいっそ、僕が七々音の純潔を奪っちゃえばいいんだ……」  聞こえてきた不穏なセリフに、本格的に身の危険を感じた。  どろりと暗い欲を孕む濁った瞳が、七々音を見つめる。  ねっとりとした視線が絡み付き、肌が粟立った。 「ひっ……」 「七々音、僕の七々音……好きだよ、愛してる……」  熱に浮かされたように囁いて、真白は強引に七々音の体を掻き抱く。 「や、やだ、離せっ」 「七々音七々音七々音七々音」  拒絶の言葉を無視してむぎゅーっと七々音を抱き締め、すりすりと頬擦りする。 「ああ、七々音だ、七々音の匂い、七々音の体温、七々音の感触、はあっ、七々音、ずっとずっとこうして七々音を感じたかった、はあはあっ」 「やややめろぉっ、変態っ、変質者っ」  懸命に暴れるけれど、真白の腕は鋼鉄のように七々音に絡み付き離れない。それどころか更に体を密着させ、ぐりぐりと全身を擦り付けてくる。 「うわあっ、やめろ、キモい、離れろぉっ」  体を引き離そうと、真白の背中に腕を回す。真白の服を引っ張ろうとして、手に触れたのはふわりと柔らかい感触だった。  まるでシルクのようになめらかな手触り。その気持ちよさに思わず撫で回す。 「あっ、七々音ってば、意外と大胆なんだね。僕がリードしようと思ってたのに、そんなに積極的に触れてくれるなんて。もちろん嬉しいからもっと触ってくれていいよ」  ぽっと頬を染める真白の背中の羽がぱたぱたと動く。  彼の言葉など耳に入らず、七々音は手を動かす。  七々音が触れているのは彼の背中の羽だ。ボリュームがあってみっしりと羽根が密集しふわふわでもふもふで温かくて、とても作り物には感じられない。  背中に背負っているのだと思っていたが、肩ベルト的なものが見当たらない。  ごそごそと背中を探れば、服に穴が開いていた。肌が露出していて、そこから羽が生えている。  そう、生えているのだ。羽の付け根を念入りに触ってみると、生えているとしか思えない。接着剤で貼り付けているのではない、生えている。 「ああっ、七々音にそんないやらしい手つきで触られたら……っ」  なにやら興奮気味の声が頭上から聞こえてくるが、七々音はそれどころではない。  ぱたぱたと羽の動きに合わせて、真白の背中の筋肉も動いている。  純白の羽。映画や漫画に出てくる天使の背中にある羽。 「え、マジか……」  七々音は呆然と呟く。  いやあり得ない。あり得ないけど、でも、この羽は確かに本物だ。  天使? この変態が? やっぱりあり得ない。天使が雌豚だのクソビッチだの言うはずがない。しかしただの変態ストーカーだとしたらこの羽の説明がつかない。  七々音は首を反らし、真白の顔を見上げた。  人間離れした、綺麗な顔。 「…………天使?」 「そうだよ」  にこりと、天使の微笑みが七々音に向けられる。  慈愛に満ちた瞳は、まさしく天使だ。  七々音はその笑顔に思わず見惚れた。  しかし清廉に見えたのはほんの数秒だった。清らかだった双眸はすぐに欲望にまみれた。 「はあはあっ、七々音の円らな瞳でそんなに見つめられたら、もう我慢できないっ」 「うわっ……」  息を荒げた変態に、あっという間にベッドに押し倒された。  はあはあしながら体をまさぐられ、七々音は悲鳴を上げる。 「ひいぃっ、やめ、やめろっ、触るなって!!」 「照れなくていいよ。僕にこうしてほしくて可愛く誘ってくれたんだよね? たくさん可愛がってあげるからね」 「違うぅ! 照れてないっ、誘ってないっ、やだばかばか離せぇっ」 「照れてるななたん可愛い過ぎるよ。涎じゅるじゅるしちゃうよ」 「んぎゃあぁっ」  涎を垂らさんばかりの緩んだ顔で迫られて、七々音はめちゃくちゃに暴れた。力の限り抵抗するけれど、真白はそれを全く意に介さず好き勝手に七々音の体を触り、制服を脱がせていく。 「はあっ、ななたんの真っ白い肌、すべすべで気持ちいい、可愛い、可愛い、美味しそう」 「やだやだ、やめっ……」  服を脱がせながら、真白は七々音の頬をぺろぺろと舐める。 「はあはあ、ななたんのほっぺぷにぷにやわらかおいひぃ」 「やだぁっ」  犬のように顔中を舐め回され、涎でべとべとにされた。  必死に暴れているのに、それを押さえながら真白は器用に七々音を裸に剥いていってしまう。  七々音は疲れてどんどん体力が奪われ、もう弱々しい抵抗しかできない。  くたりとする七々音を、全く疲れを見せない真白がいいように舐めたり触ったりしている。  気づけば七々音は全裸にされていた。 「はあっ、ななたん可愛いななたん、もうななたんマジ天使、こんな可愛いななたんを見て触ったり舐めたりしゃぶったり齧ったりできるのはななたんを一番に愛してる僕だけだよね、はあはあはあはあ」 「やだ、も、離っ……」 「七々音、七々音、愛してる」 「んんーっ」  ぶちゅっと唇を重ねられた。  はじめてのキスを奪われたショックに七々音は固まる。 「はあはあっ、ななたんの唇柔らかくておいし……はむっ」 「んーっ」  はむはむと唇を食まれ、形を辿るように舐め回される。  七々音は必死に唇を噛み締めた。  固く閉ざされた唇を、舌でつんつんとつつかれる。 「七々音、お口開けて? 七々音のお口の中ペロペロさせて、舌ちゅっちゅさせて?」 「んんーっ」  七々音は決して開けてなるものかと、口を引き結んでかぶりを振った。 「はあっ、はじめてのキスに怯えてるななたん可愛い、怖がらなくて大丈夫だよ、すぐにお口の中気持ちよくなるからね」 「んんんーっ」  ぶんぶんぶんっと首を振って拒絶する七々音に、なぜか真白はどんどん興奮していく。 「はあはあっ、ななたんに焦らされるのたまんない、可愛いななたんななたん好き」  真白の舌は七々音の唇から離れ、頬を舐め上げながら耳へと移動した。  熱い吐息が耳にかかり、擽ったさに肩を竦める。 「はあはあはあ、ななたんの可愛いお耳、ちゅうちゅうさせてね」 「っ……」  制止の声を上げたいが、口を開ければ口腔内を隈無く蹂躙されてしまうだろう。  七々音は我慢して唇を噛んだ。  真白の舌が耳の縁をねっとりと舐める。裏側も内側にも舌を這わせ、耳朶をパクリと口に含んでちゅぱちゅぱと吸い上げた。 「んんぅっ、ふ、んんっ……」  ぞくぞくする感覚に、七々音は上がりそうになる声を懸命に堪えた。  しかしぬるりと舌が耳の中まで差し込まれ、その瞬間声が漏れてしまった。 「ひあぁっ」  その隙を見逃さず、真白の指が口の中に突っ込まれた。 「ああ、ななたんの口の中……熱くてぬるぬるで気持ちいい、ななたんのちっちゃい舌可愛いね」 「ひぁっ、あっ、ひゃへあぅ……っ」  指で舌を挟んでくにくにと揉まれ、七々音は言葉にならない声を上げる。口を閉じることができず、たらりと唾液が零れた。 「あっ、ななたんの涎、もったいないっ」  そう言って真白は垂れた唾液に吸い付く。そのまま、指でこじ開けた七々音の口内に舌を差し入れた。  指が引き抜かれた代わりに舌が挿入され、強引に重ねられた唇が口を塞ぎ、閉じることを許されない。 「んあぁっ、や、んんっ」  差し込まれた舌が、味わうように口内を隅々まで舐め回す。 「はあっ、ななたんのお口おいし、ずーっとちゅうちゅうしてたい……っ」 「ふむぅっ、んんぁ、ん、んゃぁっ……」  やめろと声を上げたいのに、大きく口を開けば角度を変えて唇を重ねられ、更に奥へと舌を捩じ込まれる。  動き回る舌に上顎を擦られると、ぞくぞくと背筋が震えた。  呼吸もままならず、息苦しさに顔を背けようとするが顎を掴まれてそれも叶わない。 「逃げちゃダメだよ、七々音」 「やぁ……って、くるひ……っ」 「じゃあお口開けて」  唇が離れ、七々音は酸素を求めて大きく口を開けた。 「舌出して、いっぱい伸ばしてごらん」 「んはぁ……は、あ……」  酸欠で頭の回らなくなった七々音は、言われるままに舌を伸ばした。自分がどれだけだらしない顔をしているのか自覚もなく、てらてらと唾液にまみれた舌を突き出す。 「ああもう、ななたんどんだけ可愛いのっ」 「んむぅっ……」  息を荒げた真白が、七々音の舌にむしゃぶりついた。  彼の口内へ引きずり込まれた舌がべろべろに舐めしゃぶられ、吸い上げられ、甘噛みされる。 「はふっ、ななたんのちっちゃい可愛い舌、んふぅっ、美味しい、はむっ」  舌を伝って、だらだらと真白の唾液が口の中に流れ込んでくる。吐き出すこともできず、七々音は涙を流してそれを嚥下した。  長い時間をかけ、しつこく唇を貪られた。散々に吸われて食まれた唇は、すっかり赤く腫れてしまった。 「んは、ぁ……もう、やぁ……っ」 「ああ、泣かないでななたん、ごめんね、ななたんが可愛くていっぱいちゅうしちゃった、はじめてだったからびっくりしちゃったね」  火照った頬を撫でられて、それだけで体がびくびくと反応してしまう。 「はあはあっ、敏感ななたん可愛い、全身ペロペロしたい」 「んやあぁっ」  首筋を舐められ、甘ったるい声が七々音の口から漏れる。  べとべとになるまで首もとを舐めて吸われて、肩に噛みつかれ鎖骨をちゅうちゅうしゃぶられ、絶え間なく愛撫を繰り返されて七々音は喘ぐことしかできなかった。 「ななたんななたん、ななたんのおっぱい、はあはあはあっ」 「やあぁっ」  平らな胸を両手でむにむにと揉まれる。女の子のように扱われ、七々音は羞恥に悶えた。 「はあっはあっ、ななたんの乳首……可愛い乳首……ふにふに……はあはあっ」 「や、やめっ、そこ、やだぁっ」  乳輪ごと指で挟んで摘ままれ、くにくにと感触を楽しむように捏ね回される。 「ああ、固くなってきた、ななたんの乳首こりこりしてきたよ、可愛い可愛い可愛い」 「あっあっ、あぁんっ」 「ぷっくり膨らんで、指で押し潰すと弾力が伝わってきてぷりぷりして気持ちいい、指を離すとつんってまた突き出して、はああっ、ななたんのえっちな乳首すっごく美味しそう、食べさせてね」 「ひやあぁっ」  パクリと胸の先端を口に含まれる。熱くぬめった粘膜に敏感な突起を包まれ、七々音は背を仰け反らせて身悶えた。 「やだ、あぁっ、だめ、だめぇっ」 「はあっ、ななたんのこりこり乳首おいし……」  乳首に舌が絡み付き、ぐにぐにと転がされる。じゅるじゅると音を立てて吸われ舐めてしゃぶられ甘噛みされ、本当に食べられているような感覚だった。 「やだぁっ、食べるの、やっ、あんっ」 「ふーっ、かわい……乳首ちゅぱちゅぱ気持ちい?」 「んやぁっ、あっ……もちく、ないぃっ」 「ふふ、乳首で感じちゃうの恥ずかしい? 大丈夫だよ、乳首であんあん鳴いちゃう七々音は可愛いよ、恥ずかしがらないでいっぱい感じていいからね」 「ひゃうぅんっ」  もう片方の乳首にもむしゃぶりつかれ、七々音は感じたくもない快感に腰をくねらせる。  真白が満足するまで弄り回され、乳首は真っ赤に染まってじんじんと熱を帯びていた。  真白はまた七々音の体を舌で辿る。左右の腕に舌を這わせ、指先の一本一本をしゃぶって味わった。腋を舐めて脇腹を舐めて、腹を舐めて臍を舐める。  それから真白はうっとりとした視線をぺニスに向けた。

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