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チ〇ポの3 ビッチの奮闘

    チ〇ポの3 ビッチの奮闘  ほのかに化粧品の香りが漂う文系の校舎にひきかえ、理系の校舎には機械油の匂いやホルマリン臭といったイメージが付きまとう。それ以前に縁のない場所だ。  羽月は理工学部の校舎に一歩入ると、物珍しさも手伝って掲示物を見て歩いた。リケジョが増えたとはいえ、未だに男子学生のほうが数で(まさ)る。  言いかえればペニスの宝庫だ。  もともと羽月の目には、世界は収穫し放題のペニス畑のごとく映っている。折しもビッチ・レーダが、前方数メートルの地点にそそるペニスを発見、と反応した。  そのペニス……もとい、当該の男子学生とすれ違いざま舌なめずりをしてみせると魅入られたようについてきたので、トイレの個室にしけ込んでオヤツにした。  もう少し詳しく説明すると、便器に腰かけた男子学生にムスコに手を添えておくよう命じ、膝に乗っかる形でお迎えにいった。カリ高で、なかなかの掘り出し物だ。いきおい一回戦の余韻も冷めやらぬうちに二回戦に突入した。  タンクの蓋ががたつき、便器の蓋はたわみ、そこに肉と肉がぶつかる鈍い音が加わって、淫靡な三重奏の(おもむき)だ。心身ともにリフレッシュすることができて、有意義なひとときだった。  いい汗をかいた。羽月は大きく伸びをすると、一気に干からびたような男子学生を置き去りにして当初の目的を果たしにいった。一日一善、一日一ペニスによって細胞が活性化する。  生き血を摂取した吸血鬼さながら生気にあふれ、フェロモンを大盤振る舞いしながら、お目当ての人物の居所を訪ね歩く後ろには、ボトムの前に妖しいシミをつけてぴくぴくと痙攣する男子学生の山が築かれた。  二限目の講義が始まる寸前に階段教室にすべり込んだ。履修する必要のない科目だが、受講したい理由(わけ)がある。通学イコール、トレッキング。学生たちにそう皮肉られる所以の坂道を、えっちらおっちらとのぼって理工学部まで遠征してきたのは、どうしてもそうしたい衝動に駆られてのことだ。  つまり、おとといの夜に泊めてもらった礼を言うために涼太郎に会いにきた。実をいえば、今夜もバイト先で顔を合わせるのだから焦ることはないのだが、シジミ汁と焼き鮭から成る朝食までごちそうになった以上、ランチをおごるのが常識と考えた。  空は青く、風は爽やかで、絶好の散歩日和と自分に言い訳して出向いた次第だ。  さて肝心の涼太郎は、といえば。最前列に陣取り、板書をノートに書き写す気満々でシャープペンシルを手にして、ガリ勉くんの代表格のようだ。  さすがに『最高学府で得た知識は社会に還元するのが筋』をモットーとする男はひと味違う。参考までに羽月の場合は、好成績が即ち上質のペニスとの遭遇率が高い大企業へのパスポート、という考え方が勉強に励むモチベーションにつながる。

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