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女体化したので好きな男に抱いてもらおうと思ったのにその前に戻ってしまった話

 朝起きたら女になっていた。  胸には大きな膨らみが二つ。股間にあったはずの立派ではない一物は跡形もなく消え、女性器へと変貌を遂げていた。正直、生で女性器を見たことがないので本当に正真正銘これが女性器なのかわからなかったけれど。  自分の体を確認してベッドの上で暫し呆然としていた若菜(わかな)だが、ある考えが頭を過りハッとした。  女の体になっている。つまり、これで若菜の悲願が達成できる。  若菜には好きな男がいた。高校の同級生、井口(いぐち)(すばる)だ。イケメンで、モテモテで、彼女はいないが、いないからこそ女の子に声をかけられれば簡単に誘いに乗る来る者拒まずのヤリチン、という噂だ。若菜は昴と友達で、一緒に遊んでいたら昴はしょっちゅう女の子に声をかけられている。若菜と一緒にいるときは女の子に誘われても断っているが、一人でいるときは、誘われれば遠慮なく手を出しているらしい。だが特定の相手を作ることはなく、あくまでも遊びでしか相手にしないようだ。  密かに昴に恋心を抱いていた若菜は、自分が女だったら彼とセックスできたのに、と叶わぬ願いを胸に抱いていた。一回でも、遊びでもなんでもいいから抱いてほしいと願い、けれど男だからと諦めていた。昴が男に手を出したという話は聞いたことがないから、男はダメなのだろう。こればかりはどうしようもない。諦めるしかないと思っていたのに。  だが、若菜は女の体を手に入れた。これならば、昴に抱いてもらえる。  きっとこれは神様がくれたチャンスなのだ。若菜は短絡的にそう考えた。  鏡で自分の顔をチェックする。髪が伸びて、なんとなくサラサラになっている気がする。目が少し大きくなっている気もする。ぱっちりして、睫毛も伸びている気がする。頬も唇もふっくらしている気がする。ベースは地味で平凡な男のときのままなので美少女とは到底言えないが、ほんのちょっぴり可愛くなっている気がする。  だが、顔がいまいちでも、この胸がある。何カップかはわからないが、手に余るほどに大きい。むにむにと揉んでみると弾力があって柔らかく、大変揉みがいのある胸だ。この胸があれば、きっと誘惑されてくれるはずだ。昴がおっぱいが好きなのか尻が好きなのか太股が好きなのか知らないけれど。  顔は微妙でも、体は完全に女になっているのだから、昴に正体がバレることはないだろう。  声を出してみたら、声も女のように高くなっていた。  これならばイケる。  そう判断し、若菜は妹の部屋に入って勝手に服を拝借した。武器は胸なので胸元のあいた少し露出の多い服とスカートを選び、着替える。少し胸がきつかったが着れた。歩くたびに胸が揺れるのが気になるが、さすがにブラジャーを借りるのは気が引ける。そもそもサイズが合わない。パンツはコンビニで買うことにする。  若菜は昴にメッセージを送り、今どこでなにしているのかを尋ねた。駅の近くのファーストフード店で昼ご飯を食べていると返ってきた。  外にいるということは、逆ナンされてそのまま女の子とどこかへ行ってしまうかもしれない。もたもたしていたら誰かに先を越されてしまう。  若菜は急いで家を出て、途中コンビニで女性用のパンツを買い、トイレで履き替え、昴のいる店へ向かった。  飲み物を注文し、店内を見回して昴を捜す。それほど時間はかからずに、カウンター席でスマホを弄る昴を発見した。  いざ声をかけようとして、なんて声をかけたらいいのかわからずに立ち止まる。ナンパなんてしたことがないのだ。でも早くしないと、もう食事を終えている昴が移動してしまうかもしれない。若菜より先に、他の女の子が声をかけてしまうかもしれない。  焦った若菜は早足で昴に近づき声をかけた。 「ああああのっ」  思い切り声が裏返ってしまう。  昴はこちらを振り返る。  目が合い、若菜は思わず目線を下へずらした。  昴の視線が突き刺さる。ものすごく見られているのを感じた。  だが若菜だとバレることはないはずだ。なにせ若菜にはあるはずのない豊満なバストがしっかりと存在しているのだから。胸元まで開いた服を着ているので、詰め物ではないのは見てわかる。  正体を知られることはないと確信し、若菜は恐る恐る視線を戻した。昴とばっちり目が合うが、今度は逸らさなかった。  じっと若菜を見ていた昴は、ニコッと爽やかに微笑んだ。 「俺になにか用?」 「えっ、あっ、え、えっとその、あのっ、お隣、いいですか……っ?」 「どうぞ」  笑顔を浮かべたまま、昴は頷いた。  若菜は彼の隣に座る。ちびちびと飲み物を口に含みながら、横目で昴の様子を窺った。  昴は再びスマホを弄りはじめ、彼が声をかけてくる様子はない。  若菜の方からアクションを起こさなければ、このままなにもなく終わってしまうだろう。  昴はもういつ席を立ってもおかしくない。早くナンパしないと。  焦燥に駆られ、若菜は口を開く。 「あああのっ、昴……くんっ」  昴はゆっくりとこちらに顔を向けた。 「なんで俺の名前知ってるの?」  しまった、と若菜は心の中で叫んだ。必死に言い訳を考える。 「あ、あ、お、わ、私、実は、昴、く、井口くんと同じ学校でっ」 「そうなんだ?」 「そう! そ、それで、ずっと、井口くんのこと、カッコいいって思っててっ」 「ふぅん」 「ぐ、偶然見かけて、声、かけたのっ」 「へぇ」  会話を途切れさせてしまえば、昴はもう行ってしまうかもしれない。若菜は必死に言葉を紡いだ。 「す、井口くんのこと、好き、好きで……っ」 「好き? 俺のこと? ほんとに?」 「うんっ、ず、ずっと、好きだった……からっ」 「から?」 「一緒にホテルに行ってくださいっ」  テンパってものすごい露骨な誘い方をしてしまった。頭の緩い尻軽軽薄ビッチだと思われて引かれてしまったらどうしよう。  蒼白になる若菜に、昴はにっこり微笑んだ。 「いいよ」 「えっ……!?」 「行こうか、ホテル」  そう言って席を立つ。  あんなあけすけな誘いをすんなり受けるなんて。昴はビッチがタイプなのか。本当に来る者拒まずなのか。それとも、この巨乳のお陰だろうか。  理由なんてどうでもいい。これで昴に抱いてもらえるのだ。  若菜は躊躇いなく昴のあとについていった。  昴は一度足を止め、こちらを振り返る。 「そうだ、名前教えてよ」  尋ねられ、なにも考えてなかった若菜は必死に頭を回転させる。 「えっ、あっ、えっと……カナ! カナです!」 「カナちゃんね」  微笑む昴に連れられて、若菜は店を出た。  ホテルの部屋に入る頃には、若菜の心臓は破裂しそうになっていた。ばっくんばっくんと、痛いくらいに跳び跳ねているのがわかる。これから昴とセックスするのだと思うと心臓の高鳴りを抑えることができない。緊張と喜びで気絶しそうだ。 「シャワー浴びておいで」と言われて、落胆と安堵を同時に感じた。今すぐにでも抱いてほしいという思いと、一回一人になって気持ちを落ち着けたいという思い。  昴のもとへ向かうのに全力疾走して汗をかいたので、純粋に汗を流したいとも思い、若菜は素直に浴室へ向かった。  全裸になってシャワーを浴びる。  爆発しそうだった心臓は少しずつ落ち着いてきた。  ほう……と息を吐いて自分の体を見下ろし、若菜は硬直した。  驚きのあまり声も出なかった。  体が男に戻っている。  ボインボインの胸はなくなりぺったんこな胸板があるだけ。股間には立派ではない一物が変わらぬ姿でそこに戻っていた。  慌てて鏡を確認する。髪も元の短さになっていた。なんとなく大きくなっているっぽかった目も、なんとなくふっくらしていたような頬と唇も、完全に元の、男の顔に戻っていた。  なぜこのタイミングで。  若菜はがくりとその場に膝をついた。  神様がくれたチャンスではなかったのか。あまりにも戻るのが早すぎる。こういうのは、一晩経ってからとか、せめて昴とのセックスが終わってから元に戻るのが普通ではないのか。  結局、夢は夢でしかないのだ。若菜はどうしたって昴とはセックスできない。そういうことなのか。  絶望に打ち拉がれ、それでもどうにかまた女の体に変化しないかと必死に念じてみたりもした。しかしなんの変化も訪れず、時間だけが過ぎていく。  非常にまずい状況だ。  ショックは大きいが、今は落ち込んでいる場合ではない。  そろそろ出ないと昴に怪しまれる。けれどもう完全に若菜の姿に戻っているのだ。どうやって誤魔化せばいいのか。  とりあえず出るしかない。それから昴がシャワーを浴びている隙に逃げるのだ。  若菜はこそこそとバスルームから出て素早くバスローブを身につけた。バスタオルを頭から被り、髪を拭く振りをして髪と顔を隠す。  震える足で昴の待つ部屋へ戻った。近づかないよう、離れた場所から声をかける。 「お、お待たせっ……。井口くん、次、シャワー、どうぞっ」  懸命に裏声を出す。  昴がバスルームに入ったら、すぐに着替えて逃げよう、と頭の中でシミュレーションする。どうして露出の多い服とスカートを選んでしまったのか。男体に戻ってしまった今では後悔しかない。女装姿で家まで帰らなければならないのかと思うと辛い。  早くバスルームに行ってくれと切実に願う若菜を裏切り、昴は笑みを浮かべて言った。 「俺はいいよ」 「へえぇっ!? なんでぇ!?」  思わず男声が出てしまい、慌てて咳払いして誤魔化す。 「い、行った方がいいよ、シャワー、さっぱりするから浴びた方がいいよっ」 「だってカナちゃんシャワー長いんだもん。もう我慢できないよ」  ソファから立ち上がった昴が、こちらに近づいてくる。 「ままま待ってダメ! シャワー浴びてきて!」  近づく昴から距離を置きながら若菜は室内をさかさかと移動する。ベッドに追い詰められていると気づかずに、どんどん後ろへ後退していた。 「なんでダメなの?」 「だだだだって、こ、こういうのはシャワー浴びてからって決まってるでしょ!!」 「ふはっ、なにそれ」  昴は唇の端を吊り上げて笑う。 「なんか怪しいなぁ。もしかして、逃げようとしてる?」 「ままままさかぁっ!!」  思い切り動揺してしまうが、若菜は必死にそれを隠そうとする。 「そそんなわけないし!」 「だよねぇ? だってカナちゃんが誘ってきたんだもんね?」 「そそそうだよ!」 「俺とセックスしたくて、ホテルに来たんだよね?」 「もももももちろん!!」 「だったら、いいよね?」 「そ、そそそれは……っ」  じりじりと後退りし、なにかにぶつかった。気づくとすぐ後ろにベッドがあって、若菜はすぐに離れようとするがその前に昴に肩を押されそのまま倒れてしまう。  バスタオルが捲れそうになり、若菜はぎゅっとそれを押さえて顔と体を隠すようにうつ伏せた。すると背後から昴が覆い被さってきて、逃げ道を失う。 「まっまっまっ待った待った待って!!」 「もう充分待たされたよ」  後ろから伸ばされた昴の手が、バスローブの上から若菜の体を探る。  このままではバレてしまう。若菜は必死に制止の声を上げた。 「ダメダメダメ! お願い、やめて!!」  悲鳴じみた声を上げる若菜の耳元で、昴がくっと笑う。 「今更なに言ってんの? 自分からホテルに誘っといて、やめてもらえると思ってるの?」 「ひっ……う……」  突き放すような言葉を耳に吹き込まれ、若菜は怯え、ぎゅっと目を瞑る。  どうにか逃げ出さなくては。そう思うのに、後ろからのし掛かられ、身動きがとれない。  その間に、昴の手がバスローブの中へ侵入してくる。指先が胸に触れる。 「あれ? カナちゃん、胸全然ないね?」 「あっ、あうっ……」 「おかしいね? さっきまでおっきいおっぱいついてたのに」 「そそ、それは……っ」 「どこ行っちゃったのかな?」 「ひゃっぅんっ」  探るように昴の掌が胸を這う。変な手付きで触られて、むずむずするような感覚に若菜は体を震わせた。 「ひぁんっ」 「よかった、乳首はちゃんとあるね」 「あっあっあんっ、だ、ダメ、そこ、弄っちゃ、あぁっあっあっやぁんっ」 「カナちゃん、乳首感じるの? 気持ちいい?」 「あんっ、あっ、きもちいっ、あっあっ、それ、きもちいいっ」 「これ? くりくりするの好き?」 「すきっ、あっあぁんっ、くりくり、きもちいいっ」  乳首を指でくにくにと捏ね回され、若菜は嬌声を上げながら快感に身をくねらせる。気持ちよくて、逃げなきゃ駄目なのに、体がぐずぐずに溶けていく。 「んあっ、ダメ、ダメ、触っちゃだめぇっ」 「ダメ? なんで? 俺とセックスしたかったんでしょ?」  そう。したかった。でももう無理だ。男だとバレたら。若菜だとバレてしまったら。昴に嫌われる。気持ち悪いと思われる。友達でいられなくなってしまう。  だからなんとしてもバレる前に逃げなくてはならないのに、どれだけ必死にもがいても昴の下から抜け出せない。 「どうしたの、そんなに暴れちゃって」 「うっ……く、うぅ……っ」 「もしかして、乳首よりもこっち弄ってほしい?」 「ひっ……」  昴の手が、するりと下へ下りていく。  若菜は焦り、身を捩って止めようとするが、抵抗など意味をなさず、昴の手はあっさりと股間に行き着いた。  パンツを履いていないので、直接そこに触れられてしまう。 「あれ? これっておちんぽ? カナちゃんはもしかして男だったの?」 「ち、違う! 男じゃ、ないっ……」  もう誤魔化すことなどできないとわかっていながら、それでも若菜は咄嗟に否定していた。  くすくすと、楽しそうに笑う昴の声音が耳に届く。 「男じゃないってことは、おちんぽじゃないね? じゃあクリトリスかな?」 「あぅ……」 「だって女の子におちんぽはついてないもんね?」 「うっ……ぁ……ぅ……」  もう男だということは完全にバレてしまっている。どうすればいいかわからなくて、若菜は言葉にならない声を発する。 「だったら、ここはカナちゃんのおまんこかな?」 「ひぅっ……」  昴の手が後ろに回り、アナルを撫でる。  若菜は目に涙を浮かべてかぶりを振った。 「ちが、ぁっ……おま、こじゃ……」 「違うの? カナちゃん、女の子なのにおまんこないの?」 「うぅっ……」 「おまんこがないなら、やっぱり男だったの?」 「ち、ちが……」 「必死に女の子のふりするのも可愛いけどさ、いい加減男って認めたら?」 「っく……ぅ……」  性別はもう誤魔化しようがないのは事実だ。けれど、まだ若菜だとはバレていない。  どうにか顔を見られずに逃げ出す方法を懸命に考える若菜に、昴が言った。 「ねえ、若菜?」 「っ……」  ひゅっと息を呑む。  サーッと全身から血の気が引いていく。 「なに、なに言って……」 「あれ、まだ認めないの? シャワー浴びてるときに若菜のスマホに電話したら、カナちゃんの鞄から着信音聞こえてきたけど?」 「っ、っ……」  はくはくと、若菜はまともに息が吸えずに口を開閉する。 「さっきまで、ほんとに女の子の体になってたよね? どういうこと?」  力の抜けた若菜の手から、昴はバスタオルを剥ぎ取る。  もう、完全に正体がバレてしまった。逃げたところで今更どうにもならないし、状況は悪化するだけだろう。  若菜は暴れるのをやめて体を丸めた。  乱れた若菜の髪をとかすように、昴がさらりと頭を撫でる。 「やっぱり若菜だ。ねえ、どういうことか説明してよ」  昴の顔は見られず、若菜はうつ伏せたままぼそぼそと事情を話す。 「……朝起きたら、なんでかわかんないけど、女の体になってた……。そんで、さっき急に戻った……」 「ふーん。そういうこと」 「ふーんて……信じるのかよ……」 「だって実際、ほんとに女の子の体になってたし、それで今はもう戻ってるし」 「そうだけど……」 「まあ、なんでそんなことが起きたのか理由は考えたってわかんないだろうし別にいいよ。それよりさぁ」  昴の声音が低くなる。 「若菜、なんであんなカッコで外出たの?」 「へ……?」 「女の子になったなんて、誰にも知られたくないんじゃないの? 休みなんだから家に閉じ籠ってるでしょ、普通。それなのに俺がどこにいるか訊いてきて、わざわざ俺に会いに来て……なんでホテルに誘ったの?」 「っ、それ、はっ……」  本当のことなんて言えない。ずっと昴のことが好きで、一度でいいから抱いてほしかった、なんて。そんなこと知られたら嫌われる。  だから若菜は嘘をついた。 「ちょっと、悪ふざけっていうか……ドッキリ? す、昴のこと、からかってやろうって思って……」 「…………へえ」  昴の声が更に低く、不穏なものになる。  怒らせてしまった。でも、本当のことは言えない。嫌われたくない。 「俺のことからかうために、あんな男を誘うようなカッコで外に出たの? ノーブラででっかい胸揺らして、あんなカッコで外うろうろしてたら襲われてもおかしくないよ? それとも、もしかして男に襲われたかったとか?」 「ちち違っ、そ、そんなわけないだろ……っ」  誘惑はしたかったが、それは昴だけで、他の男に襲われたいだなんて思ってはいない。 「ほ、ほんとに、ただ、昴のことびっくりさせたかっただけで……っ」 「へえぇ」  声で彼が怒っているのが伝わってきて、若菜はビクビクする。 「ご、ごめん……」 「そんな言葉で許されると思ってるの?」 「っ、ご、ごめ……」 「ダメ。謝っても許さない」 「っ……」 「お仕置きだよ」 「えっ……」  ぐるりと体を引っくり返される。  悪辣な笑みを浮かべた昴と目が合った。 「す、昴……?」  伸ばされた昴の手が、若菜の肌をするりと撫でる。暴れたせいでバスローブが乱れ、もう殆ど脱げかけていた。 「ひっ……」  指先が乳首を掠め、大袈裟に体が跳ねた。 「やっ、ダメ、そこ、触っちゃ……っ」 「抵抗しないの。これはお仕置きなんだから」 「あぁんっ」  きゅっと突起を摘ままれ、快感に背中が仰け反る。 「感じすぎでしょ、若菜。ほんとに女の子みたい」  くすくすと笑われ、羞恥に顔に血が上る。  止めようとすれば咎めるように強く乳首を押し潰され、抵抗をやめれば優しく甘やかすような愛撫に切り替わる。  敏感な箇所を痛くされるのが怖くて、若菜はおとなしく彼の指を受け入れてしまう。  つんと尖った乳首を指で挟んで捏ねられると、どうしようもなく感じてしまいはしたない喘ぎ声が止められなくなる。 「んあっあっひっああぁっ」 「そんなに気持ちいい? 乳首弄られただけでおちんぽ勃起させちゃって……あ、おちんぽじゃなくてクリトリスだっけ」 「やあっ、触るの、だめぇっ」  昴の手がぺニスに触れる。彼の言う通り乳首の愛撫で勃起してしまったぺニスは、既に先走りさえ滲ませていた。 「もう、少し擦っただけでイッちゃいそうだね」 「ひっひあっあっあっ」  緩く、撫でるような手付きで扱かれる。もどかしい快感に、思わず腰が揺れてしまう。  そんな若菜の痴態を見下ろし、昴は楽しそうに笑った。 「いやらしく腰振っちゃって。イきたいの、若菜?」 「んあっんっんっあぁっ」 「でもダメ。イかせてあげないよ」  そう言って、昴はバスローブの紐を抜き取った。そしてそれを、若菜のぺニスの根本に巻き付ける。 「ひっ、やっ、なに、なんで……っ」 「だから、お仕置きだってば」 「な、な、なに……っ?」 「若菜がちゃんと反省するまでイかせてあげないからね」 「ひあぁっ、やっ、だめ、弄らないでぇっ」  射精を阻まれた状態でぺニスを擦られる。限界まで張り詰めた欲望は、けれど熱を塞き止められ、吐き出すことができない。 「こっちまでぬるぬるになってるね。カナちゃんのおまんこ」  ぺニスから漏れた蜜で濡れたアナルを撫でられる。 「ひうっんんっ、やっ、そこ、弄んないでっ」  いやいやと首を振るけれど、昴はやめてくれない。  ぬぷんっと指が埋め込まれる。 「んひっ」 「ははっ、入っちゃったね」 「ひっやっ、なん、なんで……っ」  どうして昴は若菜のそんなところを弄っているのだろう。いくら怒っているからといって、友達のそこに指を突っ込むなんて。 「やっ、やぁっ、きたな、からぁっ、やめっ……」  やめてと訴えるけれど、昴は聞いてくれない。それどころか、更に奥へと指を進める。  ぐるりと中で指を回しながら、昴は若菜の胸元に顔を近づけた。ペロリと胸の突起を舐める。 「んあっ、あっあっやっ、一緒、だめっ、んんっ、乳首とお尻、いっぺんに弄んないでぇっ」 「乳首舐められんの気持ちいい? 中、きゅうきゅうしてるよ」 「ひぁんっ、あっあっんっ、あぁっ、吸うの、だめぇっ」  小さな粒をちゅうっと吸われると、痺れるような甘い快感が走り抜けた。  腰が揺れ、埋め込まれた指を強く締め付ける。  動き続ける指が内壁の一部を擦った瞬間、強烈な快楽に襲われた。 「んひぃっ……!?」 「あはっ、すごい声。若菜のいいところはここかな?」 「ひぃっ、ひっあっあっあひっ、まっ、待って、そこだめ、はひぃんっんっ、だめぇっ」 「すっごい反応。そんなにいいんだ?」  顔をぐしゃぐしゃにして懇願しても、昴はやめるどころか執拗にそこを弄り続けた。気紛れに乳首を愛撫しながら、指を増やし、ぐりぐりと押し潰す。  快感が強ければ強いほど、どんどん熱は蓄積していき、射精できないぺニスが苦しかった。  射精はできないのに、絶頂感が込み上げる。 「ひんっ、んっあぁっ、いく、いくぅっ、いけな、のに、いっちゃ、ぁあっあっあっあっ」  ぼろぼろと涙を零し、震える手で昴の服にしがみつく。 「あっあっあっ、あっ、~~~~~~っ」  目を見開き、背中を仰け反らせ、若菜は絶頂を迎えた。  ひくひくと全身を痙攣させる若菜を見下ろし、昴は艶然と微笑む。 「若菜、もしかしてメスイキしたの?」 「ふぇっ? はっ……あっやぁっ、いった、いってるのに、ぐりぐり、しないれぇっ」 「中、すっごいびくびくしてるよ。おまんこ弄られてイッちゃうなんて、完璧女の子じゃん」 「まっ、待っあっあっああぁっ、らめ、らめっ、そこ擦るのらめぇっ、いったのに、また、いくっ、あっあっんあっあっあんっ」  三本の指で肉壁を何度も擦り上げられ、若菜は繰り返し絶頂へと導かれた。気持ちよすぎて辛いのに、快楽から逃れることができない。  射精はできないが、絶頂は訪れる。ぺニスは痛いくらいに張り詰め、苦しいのに、それを上回る快感が後孔からひっきりなしにもたらされる。 「ふあっあっひぅんっ、やっ、も、いきたいぃっ、いかせて、すばるぅっ」 「なに言ってるの。もう何回もイッてるくせに」 「んひああぁっ」 「ほら、またイッた」 「やっ、やあぁっ、ちが、のっ、も、めすいき、やらぁっ、しゃせぇ、しゃせぇさせてぇっ」 「それはダーメ。まだお仕置き終わってないよ」 「んあぁっあっひあっ、ああぁんっ」  前立腺を抉るように押し潰され、若菜は涙を流し身悶えた。  何度も何度も、絶えず快楽を与えられ続け、昴に縋り許しを請うが、止めてはもらえなかった。 「ひゃぁああっ、らめっ、も、おかひくなるぅっ」 「おかしくなってもいいよ。おかしくなるまでメスイキさせてあげようか」  泣きじゃくる若菜を昴は笑顔で見下ろしている。その瞳は冗談を言っているようには見えなかった。本気で、若菜を極限まで追い込もうとしている。そう思えた。  それほどまでに昴は怒っているのだ。彼はもう、若菜を許す気などないのかもしれない。嫌われたくなくて嘘をついたのに、結局、若菜は既に嫌われてしまっているのかもしれない。  その考えに至り、新たな涙が溢れてぼたぼたと零れた。  既に嫌われてしまっているのなら、嘘をつき通す必要などない。  しゃくり上げながら若菜は口を開いた。 「ひっ、ううっ、ごめ、なしゃ、あっあっひうぅっ」 「なにを謝ってるの?」 「ふぁっ、んっ、おれ、うそついた、あっんんっ」 「嘘?」  首を傾げる昴に、こくこくと頷く。 「昴の、こと、からかおうとしたんじゃないのっ、んっんっあっ、おれぇっ、すばるとせっくすしたかったのぉっ」  若菜の後孔を弄る昴の指の動きが止まった。そして、ぬぽんっと引き抜かれる。 「あぁっ、っ、おれ、おれ、昴のこと好きだったから、だから、昴にせっくすしてほしくて、女の体になったから、これなら昴にせっくすしてもらえるって思って、それで、ホテル行こうって、なのに、シャワー浴びてるときに元に戻っちゃって……っ」 「…………」 「ひっく……昴のこと、誘惑したくてあの服着たの……うそ、ついてごめんなさっ、昴のこと騙して、せっくすしてもらおうとして、ごめんなさいっ」  正体を隠し、自分を偽って彼に抱いてもらおうなんて、そんなこと考えてはいけなかったのだ。そんなこと考えなければ、嫌われることもなかった。この先も友達でいられたのに。  若菜は目を瞑り、溢れる涙を手で拭う。 「なんで嘘ついたの?」 「っ、せっくす、したかった、なんて言ったら、昴に嫌われるって、思って……っ」 「嘘なんかつかないで、さっさと本当のこと言ってくれればよかったのに」 「ごめ、なさ、あっ、ひっ、ああああぁっ……!?」  強い衝撃に襲われ、若菜は目を見開き悲鳴を上げた。 「はっ、ひっ、ひぅっ……!?」 「ほんとのこと言ってくれれば、すぐにセックスしてあげたのに」 「んぇ? えっ? せっくす……?」 「わかる? ほら、俺達今、セックスしてるんだよ?」 「んひっひっあぁっ」  ぐいっと腰を持ち上げられ、視線を向ければ、いつの間に取り出されたのか若菜の後孔にしっかりと昴の陰茎が埋め込まれていた。 「あっあっ、な、なんれぇっ? ひあっあっひっ、なんれ、おれたち、せっくすしてるの……っ?」 「若菜がセックスしたいって言ったからでしょ?」  当然のことのように昴は言うが、若菜はわけがわからない。  昴が腰を動かしはじめ、中をぐちゅぐちゅと掻き回されて、なにもわからないまま快楽に翻弄される。 「はひっひっあっあっあぁっんっ、ひあぁっ」 「蕩けた顔しちゃって。気持ちいい、若菜?」 「あっあっ、いいっ、きもちいっ、あひっ、ひぅんっ、すばると、せっくしゅ、うれし、あっあぁっあっあっん~~~~っ」 「っ……ははっ、嬉しくてまたメスイキしちゃった? 締め付けすごいよ」 「んっ、んっ、うれし、すばる、すばるぅっ」  快楽に溺れるだらしない顔を晒しながら、若菜は昴にしがみつく。  この状況の理由も意味もなにもわからない。けれど、今、彼に抱かれているのは事実で、その現実が若菜にこれ以上ない歓喜をもたらした。  理性など失い、思考は働かず、ただ好きな人に抱かれる愉悦に耽溺する。 「ひあっあぁっあっ、しゅき、すばる、ぅんんっんあっあっあんっ、すばる、あっあっ、しゅきぃっ」 「っ、あはっ、可愛い、若菜……」  昴は愛おしむように目を細め、若菜の頬を撫でる。  昴の視線と、優しく頬を撫でる感触にすら感じて、若菜はあられもない声を上げて身をくねらせた。 「可愛いから、嘘ついたことはもう許してあげる」  そう言って、昴は若菜のぺニスを戒めていた紐をほどいた。 「出していいよ、ほら、俺とセックスしながら射精してごらん」 「ひにゃっあっあっあっあっあ────っ」  先走りでぬるぬるになった性器を扱かれ、内部を剛直でぐりゅぐりゅと擦り上げられ、若菜は激しく体を震わせて射精した。  絶頂を迎え泣き喘ぐ若菜を、昴は休む暇もなく攻め立てた。収斂する肉筒に男根を抜き差しし、内奥を穿つ。  若菜は絶え間なく与えられる途方もない快楽に陶酔し、身も心もぐずぐずに蕩けていく。 「はひっううっんっあっあっあぁっ、すばる、ぅんんっ、あっ、すばるぅっ」  若菜は昴に向かって両腕を伸ばす。 「ひぅっ、すばる、ちゅー、ちゅーしたいぃっ」  理性を手放し子供のように願望をそのまま口にする若菜に、昴はうっとりと微笑んだ。 「すばるぅっんんんっ」  噛みつくように唇を重ねられた。舌を捩じ込まれ、口腔内を貪られる。隅々まで舐め尽くされ、引き出された舌をじゅるじゅると吸い上げられ、呼吸を奪うほどの激しい口づけに、若菜は拙い舌遣いで懸命に応えた。 「んんぁっ、んっふぅっんんっ、はっ、あっ」 「キス下手くそで可愛いね、若菜。全然慣れてないの」  昴は嬉しそうに囁いて、またキスを仕掛けてくる。 「あんんっ、んっんーっ」  角度を変えて、何度も何度も深く唇を重ねられた。  嬉しくて、気持ちよくて、昴とのキスに酔いしれる。 「んはぁっはっあっあっあっ」 「っは……キスは下手くそだけど、こっちは上手にちんぽ咥えてるね。若菜のおまんこ気持ちいいよ」  恍惚とした笑みを浮かべ、昴はずんっと腰を突き上げた。 「はひんっ、んっあっ、うれひっ、もっときもちよくなって、すばるぅっ、あっあんっあぁっ、すばる、しゅき、しゅきぃっ」 「はあっ、そんなに好きならもっと早く教えてよ」 「んああぁっあっあっひぅんっ」 「そしたら、他で発散させる必要なかったのに。もっと早く若菜とセックスできたのに。こんなことなら、とっとと襲ってればよかった」  昴が拗ねたようになにかを言っているが、快楽に支配された若菜の脳では理解することができなかった。 「あっあっ、はうんっんっ、すばる、すばるぅっ」 「っ、ああ、それ堪んないなぁ。俺の名前呼びながらメスイキすんの」  昴が喜んでくれているのが伝わってきて、若菜もまた、歓喜に包まれる。もっともっと喜んでほしい。  若菜の心に連動し、体は昴の望むままに反応した。  じゅぽじゅぽと剛直に腸壁を擦られ、若菜は絶頂するたびに昴の名前を呼ぶ。 「んあぁっ、いくっいくっ、すばるぅっ」 「っは、はあっ……必死になって俺のこと喜ばせちゃって、ほんと可愛い」 「んんっ、しゅき、すばる、しゅき、しゅきぃっ」 「はあっ、俺ももうイきそう、イッていい?」 「あんっあっあっ、いって、すばる、すばるもっ」 「いいの? 若菜の中に出すんだからね?」 「ひあっあっ、だして、俺のなか、あぁっ、昴のせーえき、ほしいぃっ」  彼の熱を求め、肉筒が自然と蠢き陰茎に絡み付く。  昴は唇の端を吊り上げ、獰猛な笑みを浮かべた。 「はっ……ほんと若菜は俺を煽るのが上手だね。いいよ、たっぷり出してあげる」 「んひあぁっあっあっひっあぁっ」  強く腰を掴まれ、激しく揺さぶられる。ずちゅっずちゅっと肉襞を抉られ、内奥を貫かれ、若菜は悲鳴のような声を上げ快楽に悶えた。  ごちゅっと一際深く奥を突き上げられ、膨れ上がった男根から精液が吐き出される。熱い体液を注がれながら、若菜もまた絶頂に身を震わせた。 「んはっ、あっ、あぁっ……」 「っ……ねえ若菜、俺達セックスしたんだよ、その意味わかってる?」 「んんっ……?」 「もう友達じゃない。恋人になるんだからね?」 「ふぁ……?」 「俺、一回きりの遊びで抱いたんじゃないからね? 若菜はそのつもりでホテルに誘ったみたいだけど、俺は遊びで済ませるつもりないから」 「ん……?」  昴の声は聞こえているが、なにを言っているのか、殆ど頭の働かなくなっている今の状態では意味を理解することはできなかった。 「あーあ、わかってないか。まあ、正気に戻った後でたっぷりわからせてあげればいいだけだけど」 「んっ……」  ぼんやりする若菜の唇に、キスを落とされる。若菜は無意識に舌を伸ばし、彼のキスに応えた。  ただ気持ちよくて、それ以外のことなど考えられない。  うっとりとキスを受け入れる若菜に、昴は瞳に情欲を宿らせる。体を繋げたままの状態で、再びゆるりと腰を揺らしはじめた。 「んあっ、あっあんっ、すばるぅっ」 「お互いずっと我慢してた分、いっぱいセックスしようか」 「するぅっ、すばると、せっくしゅ、あぁんっ、いっぱいしてっ、すばるぅっ」 「ははっ、可愛いね、若菜。気絶するまで可愛がってあげる。そして起きたら、ちゃんと俺の気持ち伝えるから」  このときの若菜は、数時間後に昴と恋人関係になるなんて知りもせず、ただ好きな人に抱かれる喜びに浸っていた。

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