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第7話
大丈夫だ、と言い張っていた三石だが、俺が強引に保健室に連れて行ってベッドに寝かせると、パタッと眠ってしまった。放置するのもためらわれ、俺は仕方なく付き添った。いくらフェロモンの分泌が収まったとはいえ、こんな場所で一人にしたら、また誰かに襲われかねない。
すやすや眠る三石の顔には、いつもの生意気さはなくて、何だか可愛かった。よく考えたら、アルファばかりのこの学校で、オメガの彼がやっていくのは大変だろう。さっきみたいなことだって、もしかしたら初めてではないかもしれなかった。
――突っ張るのも、無理はないか……。
俺を完璧、と表現した中川たちの言葉がふとよみがえる。確かに環境的には、恵まれている方だろう。何よりアルファというバース性は、努力では手に入れられないものだ。
――俺、今まで理解してなかったのかな……。
記者になるための勉強を重ね、いろんな知識を得たつもりだったけど、身近な母さんや明希、三石の苦労は何もわかっていなかったかもしれない。そんなことを考えながら三石の顔を見つめていると、奴はふと寝返りを打った。その拍子に布団が乱れ、首筋があらわになる。そのうなじは意外にも細くて、俺は思わずドキリとした。
――あ……、やば。
抑制剤で落ち着いたとはいえ、微量のオメガフェロモンはまだ漂っている。保健室なんて狭い空間に二人でいれば、なおさら意識せざるを得ない。
――念のため……。
父さんがくれたアルファ用抑制剤を出そうと、鞄に手を突っ込んだ時。三石の目がパチッと開いた。
「白柳先輩? ずっと、付いててくれたんですか? ……ていうか、それは?」
三石の目は、俺が手にしている抑制剤の箱に釘付けだった。
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