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第5話

「んもー、蘭は心配性だなあ」  一連の話を聞いた悠は、呆れたように笑った。 「今時、授かり婚なんて、珍しくもないじゃん。蘭が堅すぎなんじゃないの?」 「何、他人事みたいに言ってんだよ。あやかちゃんの話だぞ?」  蘭は眉をひそめたが、悠はけろりとしている。 「あやかなら、昔から海君に憧れてたから。大好きな海君のお嫁さんになれるって、喜んでるよ? まあ、旦那はそりゃ、ちょっと寂しそうだけど」 「――やっぱり!?」 「でも、僕たち自身がデキ婚だからね。偉そうなこと言えないじゃん」  悠は、くすくす笑っている。そういえばそうだった、と蘭は思い出した。 「とにかく、申し訳ない。うちの息子のせいで」 「だからいいって。それに望大君の方も、中学時代からの付き合いなんでしょ? だったら、きっと信頼関係あるって。平気、平気」 「でもなあ……。あの頃俺、仕事に没頭してたから。もっと子供たちのことをちゃんと見て、しつけとくべきだったかなって」  頭を垂れる蘭を見て、悠は肩をすくめた。 「そうかあ? 蘭のとこの子は、みんなしっかりしてるよ。明希ちゃんなんか、15の年に、僕に料理習いに来たんだよ。内緒で教えて欲しいって」 「――ええ!? そうだったのか?」  それは初耳だった。 「稲本さんを、胃袋でつかもうとしてたんだね。ちなみに僕、明希ちゃんが彼を好きなのは知ってたけど、あえて知らないふりしてたんだよ」  そういえばその頃から、積極的に食事の支度をしてくれるようになった、と蘭は思い出した。単に、母親の自分が仕事で忙しいのを、気遣ってくれているのかと思っていたが。

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