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第11話

「俺は何だか、君らのことを誤解してたみたいだ。望大が無責任な真似をしたんじゃないかって、あいつをずいぶん叱ったんだよ。でも、実際は違ったんだな……」  頭の中では、陽介や悠の台詞が蘇っていた。  ――三石君がどう思っているかはわからないぞ……。  ――蘭も子離れしないと……。  あれは本当だった、としみじみ思う。はい、と三石は言った。 「こっそり休学手続をしようとしたけど、結果的にバレちゃって。それで、プロポーズされたんです。先輩は、責任感のある人ですよ? 二人とも社会人になったら、申し込もうと思ってた、こんな順序になって申し訳ないって、すごく謝ってました」 「夏生君、是非うちに嫁に来てくれ」  蘭は、三石の目を見て告げた。 「君が引け目を感じることは、何も無い。さっき家の釣り合いがどうとか言ってたけど、俺の実家だって大したもんじゃないぞ?」 「そんな! 『M&Rシステムズ』といったら、すごい会社じゃないですか」  三石が、ぶんぶんと首を振る。確かに今や、『M&Rシステムズ』はIT業界ではトップを走っている。蘭の養父はもう引退したが、跡を継いだ実子が会社を大きくしたのだ。陽介の父・(いさお)も、陰ながらバックアップしたそうである。 「俺が陽介と結婚した頃は、まだしょぼかったもん。俺もあの時は、釣り合わないんじゃって、びくびくしたよ」  安心させるように豪快に笑うと、三石はほっとしたような表情を浮かべた。

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