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第4話

「……それは、僕がオメガだからですか」  ふと、三石が真剣な口調になる。失言だったかな、と俺は思った。アルファばかりの学校に通っているせいか、三石はバース差別に敏感だ。俺は、あわてて言葉を探した。 「いや、俺自身が興味あんだよ。俺も、もっと鍛えなきゃなって思っててさ。兄さんに比べれば、まだまだだし」  まんざら嘘ではない。海兄さんは、父さんに……というか、じいちゃんに似て体格が良い。でも俺は、母さんの血も引いているせいか、アルファにしては細めの体型なのだ。三石が、へえ、と言いたげな顔をする。 「お兄さんて、アメリカに留学中なんですよね? どこの高校でしたっけ?」  学校名を告げたその時だった。俺たちのテーブルの横に、スッと人影が現れた。 「偶然ね! そこ、私が通ってた学校」  俺は、びっくりして顔を上げた。突如話に割り込んできたのは、最近隣のクラスに転入してきた、深沢(ふかざわ)という女子だった。アメリカからの帰国子女である。 「あ、ごめんね、急に話に入って。懐かしい学校の名前が聞こえたから、つい」  深沢は、軽くウィンクした。大げさな仕草だが、彼女がやると妙に様になる。顔立ちが大人っぽいせいかな、と俺は思った。そういえば、美人の転入生だ、と男子が噂していたっけ。まさか海兄さんと同じ高校とは、思わなかったが。 「偶然てあるんだね! ね、是非お兄さんのお話聞かせてよ、ミヒロ」  身を乗り出されて、俺はますます驚いた。 (いきなり名前呼びかよ?)  深沢と口をきくのは、初めてだというのに。向こう(アメリカ)だと、それが普通なのだろうか。

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