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第11話

「はあ? そんなんじゃないって。深沢、うちの兄貴と同じ高校だったから、その話をしてだけだし」 「でも最近、しょっちゅうじゃね?」  中川は、なおも疑わしそうな顔をした。本当に違うのだ、と答えると、今度はつまらなさそうな顔に変わった。 「あー、ようやく白柳にも春が訪れたのかと思ったのに、がっかりだぜ。お前ってば、片っ端から女を振るんだもんなあ。羨ましいつーか、もったいないつーか……。一体、どんだけ理想が高いんだよ?」 「別に、高いわけじゃねーよ。家名とか財産とか、そんなの目当ての連中はまっぴらってだけ」  そう答えると、中川は首をかしげた。 「全員がそうってわけでもなかったと思うけどなあ。お前自身が好きって奴も、結構いたと思うぞ?」 「そうかな」  ああ、と中川は大真面目な顔で頷いた。 「白柳は、自覚なさすぎだよ。客観的に見てお前って、いいとこ取りだぞ? 顔はお袋さんそっくりで美形だし、でも親父と同じアルファで、成績も優秀で。俺が女なら、惚れてたかも」 「やめろ。気持ち悪りい」  軽く距離を取れば、中川は「冗談だって」と言った。 「しかし、惜しいなあ。深沢なら、似合いって感じなのに。てか、女子の間では結構噂になってるぞ? 彼女ならあたしたちも諦めるしかない~、ってさ」  わざとらしい裏声に、俺はさらに数センチ距離を取った。 「中には、勘ぐる奴も出て来てんぞ? 実は白柳と深沢は、親も決めた許嫁同士なんじゃないか、ってな」 「ちょっ……、何だよ、それ!?」  思いがけない話に、俺は仰天した。

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