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第13話

 教室を出て、中川と一緒に帰る途中も、俺の頭の中は三石のことでいっぱいだった。 (何も相談してこないってことは、部活は順調なんだろうけど。こっちから呼び出すか? 護身術とか言って傷つけたかって聞くだけのために? それも、何だか大げさだよな……)  これまではずっと、三石が新聞部の活動のことで俺を頼って呼び出す、というパターンだった。いざ部活から離れると、とたんにどう振る舞ってよいかわからなくなり、俺は頭を抱えた。 「……あれ、どこ行くんだ?」  ふと気づけば、中川は校門とは反対方向へ歩いて行く。怪訝に思った俺は、奴を呼び止めた。 「中等部。妹に、届けもんがあってさ」  中川の妹は新聞部だったな、と俺は思い出した。しかも今日は、活動日ではないか……。  約一年ぶりの中等部は、俺たちがいた頃とそれほど変わっていなかった。懐かしいなあ、と中川が目を細める。 「ところで、何で白柳まで付いて来んの?」 「まー、久しぶりに懐かしくなったっていうか? 一応、前部長だし」  そうか、と中川はあっさり納得した。 「新聞部、結構だれてきてるみたいだけど、怒るなよな。何せ、伝説の白柳部長がいなくなっってから、皆やる気が無くなったみたい」  中川が、冗談めかして言う。 「別に怒るかよ」 「なら安心。えーと、あいつは……、あ、いたいた。ちょっと邪魔して来るわ」  妹を見つけたらしき中川が、新聞部の部室へ入って行く。俺は少し離れた所から、部内の様子をうかがった。 (あいつ、いるかな……)  三石は、部長の村井の隣にいた。何やら熱心に、村井の説明を聞いてメモを取っている。その表情は、いつも俺に教わっている時同様に真剣で、俺は何だか胸がもやっとした。 (いや、村井は現部長なんだし。頼るのは当然だよな……)  自分に言い聞かせようとした俺だが、次の瞬間目を疑った。村井が、三石の頭を軽く撫でたのだ。三石は顔を赤らめると、はにかんだように笑った。  俺は、反射的に踵を返していた。

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