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第20話
「部長就任、おめでとう。大変だと思うけど、頑張れよな」
俺は、三石に向かって微笑んだ。
「何かあったら、いつでも相談しに来いよ? これまでみたいにな」
「はい、ありがとうございます」
丁重に頭を下げた後、三石はちょっと口ごもった。
「あの、でも、一つお願いが。今度ご相談する時は、違うお店でもいいですか?」
「あれ、あのカフェ嫌なの?」
どうして急にそんなことを言い出すのだろう、と俺は訝った。これまで不満など、言われたことは無いが。そもそも、最初にあそこを指定したのは三石だ。
「そりゃ、別の店でもいいけど。俺はあの店のメニュー、割と気に入ってたんだけどな……。ああそうか、お前にはボリュームが多すぎるんだっけ?」
「だから違いますって!」
軽くからかえば、三石はむきになった。
「あれくらい、食べられるって言ってるでしょ! そうじゃなくて、先輩と深沢さんが話してた光景を思い出しちゃうじゃないですか。すっごくお似合いで……」
言葉の途中で、三石ははっとしたように口をつぐんだ。でも遅い。俺は、聞き逃さなかった。
「なるほど。やっぱり、妬いてたんだな?」
「えっと、違……」
「な、三石」
俺は、もう一度三石の目を見つめた。
「お前も同じ気持ちなら、言わせてくれ。俺と付き合って欲しい」
三石の顔が、熟れたトマトみたいに真っ赤になっていく。しばらくして奴は、か細い声ではい、と答えた。たまらず俺は、奴の頬を両手で包み込んだ。まだ濡れた感触がする。
「三石……」
俺はゆっくりと、唇を三石のそれに重ねた。
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