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第21話

 三石を怖がらせないよう、触れるだけのキスを繰り返す。奴の唇は、驚くほど柔らかかった。何度か口づけるうちに我慢できなくなり、俺は三石を抱きしめた。さすがに焦ったのか、奴がうろたえ始める。 「先輩! こんなとこで……。人が来ますって」 「新聞部の奴しか通んないだろ。しかも今日は、部活休みだし。だから平気」  じたばたする三石を、俺はぎゅっと抱き込んだ。やっぱり細いし、それに小さい。頭なんて、俺の鎖骨より下だ。 (そういえば、村井が撫でてやがったな)  すっぽり俺の胸に埋まった三石の頭を見つめていると、ムカつく思い出が蘇ってきた。金輪際他の奴に触れさせないようにせねば、と決意する。 「……何ですか。やっぱりチビだとか、思ってるんでしょう」  黙って見下ろしていると、三石はどうやら誤解したらしい。そんなとんちんかんなことを言い出した。 「まあな」  そういうことにしておこう、と俺は思った。村井に嫉妬していたことは、未来永劫秘密だ。 「もー。先輩って時々、意地悪ですよね」  いいじゃんか、と俺は笑った。ぶつぶつ言う三石の耳元に口を寄せ、小声で続ける。 「いいんだよ、お前はこのサイズで。だって、こうした時にちょうど収まるだろう?」  ここにな、と胸を指せば、三石は耳まで赤くなった。温もりと、微かに香るオメガフェロモンが愛おしい。満ち足りた思いに浸りながらも、俺は少しだけ不満を感じた。 (俺は好きだって伝えたけど、こいつはまだ、言ってくれてないよな……)  まあ、意地っ張りなこいつのことだ。ここは長期戦で粘るしかなかろう。そんな風に考えていたその時だった。俺の胸に寄せられた三石の唇が、小さく動いた。 「先輩が、好きです」                                       了  ※この後は、陽介視点のおまけが続きます。

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