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第2話

「ただいま!」  その時、ダイニングのドアが勢い良く開いた。蘭が帰って来たのだ。 「……あれ、何か作ってくれたの?」  蘭は、目ざとく食卓に目を留めた。 「ああ。君、疲れているだろうと思ってな」 「ありがとう! 助かった」  蘭は、機嫌良く席に着いた。雑炊をよそってやると、蘭は元気よく食べ始めたが、すぐに目を見張った。 「めちゃくちゃ美味いじゃんか! 何、これ本当にお前が作ったの? 明希じゃなくて?」 「そうだ。口に合ったならよかった」  うんうんと頷きながらも、蘭はふと悔しそうな顔をした。 「しっかし、料理なんて滅多にしないお前が、なんでこんなに美味いもんが作れるんだ? やっぱアルファって、何でもできるんだな……。俺なんて、十七年やっててもあのレベルだってのに」 「俺は、君の料理好きだぞ?」  目を見つめて静かに告げれば、蘭は少し赤くなった。 「お世辞はいいって」 「お世辞なものか。作り置きしてくれてた野菜炒め、本当に美味かった」  ありがとう、と蘭がごにょごにょつぶやく。照れくさかったのか、彼はすぐに話題を変えてきた。 「あ、そうそう。今回の取材だけど、大成功だったぞ?」 「そうか。よかったな」  うん、と蘭は得意げに微笑んだ。 「××議員だけど、オメガのための補助金を私的流用していることがわかった。確たる証拠をつかんできたからな。早速、すっぱ抜いてやる!」 (その議員はうちの党なんだがな)  すっぱ抜かれた暁には、さぞや野党からガミガミ追及されることだろう。陽介は内心、深いため息をついた。

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