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第16話

「元気だなあ。相当、溜めてただろ」  試みに幹を掌で包むと、設楽は身の置き所がないといいたげに上半身をひねる。ウブな反応と裏腹に昂ぶりは獰猛なまでにみなぎり、血管を浮き立たせたそれの根元をふりだしに穂先までの道筋を撫であげると、勘弁してください──と設楽はうわずった声を洩らす。 「じゃ、あとはセルフサービスでよろしく」  この期に及んで殺生な、という様相を呈する屹立を放り出す。すると、設楽はすがりつくような眼差しを向けてくる。  おあずけを食ったわんこさながらの表情(かお)に俄然、Sっ気を刺激されて、おれはこれ見よがしに親指を扉に向けた。  目論見どおり誰かがきたと勘違いして、設楽の視線が泳ぐ。その隙に乗じて八の字に投げ出された脚の間にうずくまり、和毛(にこげ)が頬にくすぐったい秘部に顔をうずめると、設楽はぎょっとしたふうに跳ね起きて、おかげで食べごろに熟したイチモツが遠のく。 「かっ、かようなバッチイものを口にされたらおなかをこわします!」 「ちんこに(あた)る? 寡聞にして知らないな」    もともと奉仕するのが好きなほうだし(というより不倫男はフェラでイッて──二回に一回は顔射で終わって──悦に入るAVマニアだった)、昔とった杵柄的に口腔の奥行きいっぱいに猛りを頬張り、手を添えた内腿にさざ波が走った部分を念入りにねぶる。  頭の隅で、ちらりと考える。事、色恋沙汰において、さしずめ無敗の帝王といった印象があった設楽Aは、とりわけベッドの中では主導権を握って離さないにちがいない。  濃厚なキスで淫靡なムードを高めながら、一枚、また一枚とおれを裸に剝いていく……。  まばたきひとつ、設楽Aの幻影を振り払う。舌づかいに強弱をつけて砲身をかわいがり、それと並行してを弄ぶと、シーツを皺くちゃにして玩弄を堪え忍んでいた腕が宙に浮く。おれを抱きしめようか、押しのけようか、と葛藤しているように虚空を行き惑う。 「後生です。口を……放してください」  と、懇願されても〝苦み走ったいい男がエロ技に翻弄されてよがる図〟には一見の価値があり、このさい設楽を陥落させてみたい。  カサが張った先端に喉を突かれて嘔吐(えず)き、それでも陽根を舐めあやすスピードを速める。ぷくり、としみ出したほろ苦い雫をすすると、煽られて茎が萌す。  設楽が放ったものなら、いいコにしていたご褒美にかこつけて飲んであげるにやぶさかじゃないかも。誘惑に駆られて先っぽを吸いしだくと、設楽は遮二無二ずり上がり、体育座りに縮こまった。

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