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第35話

 ともあれ思う壺にはまった夜(設楽は初夜と言い張るけれど)に話を戻そう。  鈴口に舌をこじ入れてきて、おれにとどめを刺した設楽は、敏捷に(たい)を入れ替えてデッキチェアに腰かけた。そして膝の上にさらい取ったおれにくちづけて、口移しで淫液をそそぎ込む。 「シャドウと、どちらが上手だ」 「うんと点数をおまけして、あなた……」  後ろにうずめた指を蠢かす設楽は憎らしい反面、ちょっと可愛い。果ては舌にぴりっとくる自分のの味にかえってそそられて花びらがしどけなくめくれあがり、欲しい──と設楽を秘処にいざなうようだ。  もっとも胸と背中が密着する体勢におれを抱き直すかたわらボトムをくつろげて、どさくさにまぎれて雄蕊を陰門にあてがってくるあたり、油断も隙もあったものじゃない。 「年甲斐もなくサカって、みっともない」  ぬるみのきわで前後する手をはたき落とし、肩ごしに設楽に笑いかける。すると陽物を支えて進入する角度を計る彼も顔をほころばす。  ところが、だ。耳たぶに舌を這わされて、びくんとなった瞬間を狙い澄まして、亀頭が花芯にめり込む。 「卑怯、だ……あ、んっ!」  灼熱の塊が攻め入ってくると、躰がまっぷたつになるような衝撃にみまわれて襞が軋む。入り口をこじ開けられる感覚を味わうのは一年以上ぶりで、かてて加えて弾丸が装填されて荒ぶる屹立は、そこの容量を超えている。 「挿入(はい)れない。ゆるめて」  何か勝手が違うのか、声音に困惑がにじむ。 「この花は、妙に頑なだ。シャドウは美肉(うまじし)を手つかずで残すような愚か者だったのか」  砲身が三割がた埋没すると、いっとう太い部分がつかえてニッチもサッチもいかない。 「天地神明に誓ってマジっ! あっちの設楽とはしごきっこどまり……!」 「見え透いた嘘をつくものじゃない」  首をねじ曲げて不信感もあらわな顔を()めつけると、設楽はそ知らぬふうで腰を軽く揺すって、怒張のおさまり具合を調節する。 「豹変しすぎで、詐欺だ。冬哉さん、冬哉さんて健気だったころと、ギャップありすぎ」 「では、肝に銘じておきなさい。今度、わたしとシャドウを比較するようなことがあればたっぷりとお仕置きをする。ただし恋人同士にふさわしく、ベッドの上で」  その一例と称して首筋をついばまれると、とも、もっとたくさんキスをしておけばよかったなあ……なんて愚にもつかない思いが脳裡をよぎって瞳が潤んだ。 「カーラ(かわいい)、冬哉。泣きやんでおくれ」  不遜な男がまごついたふうに頬ずりしてくる図が新鮮で、汗ばんだ額をかじって返す。

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