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エロわんこの野望(第5話『わんこと年越し』1)

俺と朝倉はソファの前に座っている。ソファに寄りかかる形だ。俺は後ろから朝倉に抱きしめられている。目の前のちゃぶ台にはみかん。 「橋本。これ食べろ。甘い」 朝倉が、自分のみかんを俺の口に運んだ。すごく甘くておいしい。 「ほんとだ。当たりだね」 「な?」 「朝倉。はい」 「ありがと。……う!?」 「酸っぱくて固いだろ?」 「何、食わすんだよ! うわ……口直し。って、もう甘いみかんないか。橋本ー」 「ん」 俺は朝倉の方に顔を向けた。軽く唇を重ねる。 「足りない」 「欲しがりわんこだなあ、ん、ん」 音を立てながらキスをした。キスしたまま、朝倉にきつく抱きしめられた。朝倉、お風呂上がりのいい匂いがする。あったかいなあ。 テレビは紅白歌合戦が終わるところだ。 今日は大晦日。俺と朝倉は実家に帰らなかった。 なぜかというと……。 「橋本。そろそろはじめるか」 朝倉が心の底から嬉しそうな顔をしている。興奮しすぎているのか、ちょっと顔が赤い。 「ハードル高いって。カウントダウンに合わせるなんて」 「橋本。俺がコントロールできればいいだけだから、楽勝だって」 「ほんと、うちのわんこはエロいなあ」 「そこが好きなんだろ?」 「えー。提案されたときはひいたよ」 数週間前。朝倉は言った。 「今年は実家に帰らないで、ふたりで年越ししよう。することはひとつ」 「言い方からして、何をするかわかるよ……わかる自分が恥ずかしいよ」 「橋本。ほんとにわかってんのか? 年越しにするんだぞ」 「抱き合うんでしょ?」 「それだけじゃない。年が変わる瞬間を狙って、いく」 「なにそれ!?」 「俺は二年間、橋本のなかで射精した男になりたい」 「マジかよ、エロわんこ……」 呆れていた俺だが、あることをひらめいた。 「いいよ、朝倉! ふたりですごい思い出作ろう!」 「おう! あー、31日が楽しみだなあ」 俺は頷いた。斜め上を行く年越しにしてやるからな。朝倉。 そして12月31日がきた。 朝倉は俺を抱き上げた。テレビはつけたままだ。部屋がそんなに広くないから、数歩で布団に到着。 俺はゆっくり布団におろされた。 朝倉は俺のパジャマのボタンを外していく。 テレビから鐘の音がした。 「まずい、除夜の鐘で煩悩が消えてしまう」 朝倉は体を起こすと、リモコンでチャンネルを変えた。音楽ライブの番組が画面に映る。 「ライブはカウントダウンがわかりやすい」 「そこまで考えるのか」 朝倉、本気だ……! 朝倉が俺に乗っかってきた。 「続きしよう。……って、橋本」 俺は朝倉を押し倒した。 「朝倉。俺のなかでコントロールするって難しいよ」

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