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お年玉あげる(第5話『わんこと年越し』4)
「俺にはおまえしかいないだろ。おまえも、俺しかいないだろ」
「ははは、強引なプロポーズしやがって。俺様なわんこだなあ」
「飼い主大好きだから、こうなるんだよ」
「朝倉、かわいい!」
俺は朝倉をぎゅっと抱きしめて、頭を撫でた。朝倉は俺の手を取ると、幾度もキスをする。
「かわいいわんこにお年玉くれよ。エロい飼い主さん」
「なんだよ、ビーフジャーキーか?」
「ちげえよ。『好き』っていっぱい言って」
「好きだよ、朝倉」
朝倉は満面の笑みを浮かべている。尻尾があるならぶんぶん振っているだろう。
「まだ。もっと言って」
「欲しがりだなあ。好き。好きだよ」
「知ってる」
「もー、なんなんだよー。朝倉ー」
俺も、同じように笑った。
「してるあいだの『好き』って、夢中になって言うけどさ。終わったあとに言うと、いまのは気持ちよかったです、って意味のような気がしないか?」
「そうかな?」
「俺はそういう意味も含めて言ってる」
「え。朝倉の『愛してる』ってそういうことだったの?」
朝倉は俺の髪を撫でた。俺の背中を軽く叩いてくる。
「好きな人のなかに出すんだから、いつも気持ちいいに決まってるだろ。でも橋本はどうなのかなって、たまに思う。なかに入れられるって、男として屈辱的じゃね?」
「そんなこと気にしてたのかー」
「大事なことだろ」
「朝倉。大丈夫だよ。朝倉のが入ってくるときドキドキする。いつも。男なのにこういうことが許せるなんて……いけない関係って言うのかな。特別な感じ、かな。俺さ」
俺は、はじめて朝倉に抱かれたときのことを思い出した。
「朝倉が俺を抱きたいって言ったときは、びっくりしたよ。俺たち、同棲するまで擦り合いしかしなかっただろ? いっしょに暮らしたら夜は女扱いされちゃうんだなって、ちょっと落ち込んだ。でも。朝倉、覚えてるか。はじめて抱き合ったあとのこと」
「覚えてる」
「ふたりで感動したもんな」
「ああ。ふたりでちょっと泣いたよな」
「え、俺は泣いてないよ」
「泣いてただろ。橋本の目が綺麗だなって見つめていたら、潤んでた」
「それ、泣いてるって言うのかなあ。朝倉が、痛いかって、何度も聞いてきて」
「おまえが『嬉しすぎてわかんない』って言ったんだよな」
「そう。あのときとずっとおんなじだよ。朝倉に抱かれるのって。ふたりで部屋にいると触れ合えるけど、ここを出たら、俺たちは友だち」
「友だちのふり、な」
「うん。反動なのかなあ。ここにいると、欲張りになるんだ。朝倉もっと触って、俺も朝倉に触りたいって思う」
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