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43.魔導車で

準備を終えた者たちから魔導車に乗り込んでいく。 魔石の魔力(マナ)を使用して走る車は御者がいらない代わりに、誰かが運転をする必要がある。 ハンドルを握り、ペダルで速さと止まるときの命令を出す。 この車はとても貴重なもので、このギルドでも一台しか保有していないものだ。 しかも動かし方が複雑で、ある程度の魔力(マナ)を一定に保たないとすぐに止まってしまうので魔石を大量に使うし燃費が非常に悪いので大人数を一気に運びたいときだけに使っていた。 かなり大型なので、隠密行動するにも向いていない。 今回は大人数を運ぶ目的だけで使われているが、帰りの燃費は用意されていないので帰りは皆それぞれの方法で帰還することになる。 「何故に僕が運転なのか聞きたいのだけれど」 「アルヴァーノ坊っちゃんは高級なモンに詳しいだろ?なんてったって商人ギルドのお坊ちゃんなんだからよ」 「……確かにウチの商品ではある。だからといって押し付けられても……」 そう、僕は運転席に座らされている。 勿論運転はできるのだが、疲れるから正直したくない。 それに何かあった場合に一番狙われる位置だ。 「アルヴァーノ、お前が運転するのならば俺が隣で待機する」 「リューが?」 「あぁ。万が一狙われた場合は速やかに対処する」 リューがひと睨みすると、からかうように俺に運転を押し付けてきたギルドの血気盛んな老齢の戦士が舌打ちして引いた。 コイツらは面倒事を僕に押し付けたいだけだ。それに僕のことを下に見ているからな。 言っておくが、このオッサンよりは僕の方が強いと思う。 リューはそれも分かった上で言ってくれたと思うと嬉しくて仕方がない。 「リューと一緒なら僕も運転しても構わない」 「お前は器用だ。こういうことは向いている。皆揃ったようだし出発しよう」 (何か褒めてくれてるみたいだな。それは少し嬉しいかもしれない) 僕がそんなことを考えている間に、リューが周りを見回して頷く。 他の者も納得したようなので、魔石を起動させて魔力(マナ)を巡らせる。 行き渡ったところでペダルを踏んで魔導車を発進させた。 +++ 目的地に着くと、皆、防寒具をしっかりと整える。 目の前は真っ白な銀世界。雪もちらついていて吐く息も白い。 奥には山も見えて斜面は雪ですっかり覆われている。 地には雪が降り積もり膝丈まで雪で埋もれてしまう。何も見えないが遠くに何者かの気配が感じられる気がした。 「赤い目がポツリポツリと見える。雪の中に魔物が潜んでいる」 リューが小声で鋭い視線を遠くへと向ける。 今回の依頼は魔物の群れの殲滅だからな。 街や村に来る前に数を減らしておかなくては被害が大きくなってしまう。 「何ビビってやがんだ?こういうのは先手必勝なんだよ。行くぜ!」 相変わらず団体行動が取れないギルドだ。期待していなかったが自分勝手に飛び出した者を筆頭に戦略も何もなく雪の中へと皆散っていく。

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