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第6話

「……良いのかよ」 思わずぽつりと呟いた。 「え?」 驚いた顔で俺を見たキラキライケメン王子に 「お前はそれで良いのかよ!」 そう叫んでいた。 「お前くらいにイケメンだったら、どんな美女だって嫁に出来るのに! こんな、なんの変哲もないただのモブがお前の伴侶なんて……」 悲しくなって、涙が溢れて来た。 「多朗?」 そっと触れようと伸ばされた手を払い 「俺は嫌だ! どんな運命でも、自分で切り開いてやる。帰れないっていうなら、自分で帰る方法を探してやる! だから、お前は予言なんかじゃなくてお前の好きな相手と添い遂げてくれよ!」 そう叫んでいた。 そのままパーティー会場を抜け出し、裏庭にある庭園で涙を拭っていると 「こんな所に居たのですか?」 と、キラキライケメン王子が俺を追い掛けて来た。 満月の光だけが俺達を照らしていて、満月の光さえもキラキライケメン王子を美しく照らしている。 俺の隣に来ると 「隣に座っても?」 って聞いて来た。 俺が黙って頷くと、綺麗な立居振る舞いで隣に座り 「多朗。突然異世界に飛ばされて、戸惑う事が多いのに申し訳なかった」 突然、頭を下げて謝られて驚いて顔を見ると 「僕はね……幼い頃にババ様に予言されてから、ずっときみを待っていたんだ。どんな容姿で、どんな声をしてどんな風に話をするんだろうって……」 夜空を見上げてそう呟いた。 「がっかりしただろう?」 小さく笑って言うと、彼は綺麗な顔で微笑み 「とんでもない! むしろ逆だよ。昼間に姿を見掛けた時、すぐに多朗だと分かったよ。我慢できなくて、馬車を飛び降りて声を掛けて怯えさせてしまった事、本当に反省している」 と、再び頭を下げられてしまう。 「そんな! 頭を上げろよ! 王子様が簡単に頭を下げちゃダメだろう!」 慌てて叫ぶ俺の声に、下げた頭をゆっくりと上げる彼の睫毛が長くて、月の光に当たり輝いて綺麗なのにも再び驚いた。 こんなにも全て美しい男が、俺なんかの相手で良い筈が無い。 そう思っている俺の頬を、そっと彼の長くて綺麗な指が触れた。 思わず触れられた彼の美しい顔を見上げてしまうと、ゆっくりと彼の顔が近付いて来た。 思わず目を閉じそうなって、ハッと我に返る。 「だから! 俺はそういうんじゃ無いんだよ!」 慌てて彼の顔を押さえて必死に阻止すると 「残念、今ならいけると思ったのに」 ぺろりと舌を出して笑う彼に、一瞬ドキリとして (待て!ドキっじゃねぇんだよ!) と、自分で自分に叱咤する。 「俺はホモじゃねぇーーーー!」 夜の闇に、俺の叫びが響いたのは言うまでもない。

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