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第13話

するとシルヴァの緊張が一気に解け 「なんだ、きみ達か」 ふわりと優しい笑顔に変わり、ドアを開けて外に出た。 「シルヴァ王子、又遠征ですか?」 「シルヴァ王子、次はいつ戻られますか?」 「シルヴァ王子、旅中に食べて下さい」 子供数十人に囲まれ、シルヴァが楽しそうに子供達と会話している。 シルヴァを見つめる子供達の目は、キラキラ輝いている。 シルヴァは一人一人の頭を撫でながら 「父上の仕事は順調か?」 「母上の病は良くなったか?」 「兄弟喧嘩はしていないか?」 「何か困った事は無いか?」 と声を掛け 「西の街に視察へ行くだけだ。直ぐに戻る」 シルヴァの言葉に、子供達を遠くから見つめていた親の1人が近付いて来て 「シルヴァ王子、西で困った事が起きたらルシェという男を訪ねると良い。俺の名前を出したら力になってくれる筈だ」 厳つい男性に言われ、シルヴァは笑顔を返し 「ラシュアの知人なら信頼出来るな。ありがとう」 そう言って 「そろそろ行くな。みんな、ありがとう」 手ぶらで外に出た筈のシルヴァの手には、カゴに入った食べ物や飲み物でいっぱいになっている。 俺は馬車から降りて、シルヴァを囲む人達に一礼した。 すると 「シルヴァ王子!あの方が、シルヴァ王子の?」 と、俺に視線が集まる。 (う……視線が痛い) 苦笑いしていると 「でもあの人、勇者様の従者様じゃない?」 女の子が呟くと 「あれ? シルヴァ王子は勇者様がお相手では無いのですか?」 恋愛話は例え子供でも、女子は好きらしい。 俺が困った顔をしていると、シルヴァは優しく微笑んで 「さぁ、どうだろうね」 と答えて、ゆっくり俺の隣に並ぶと 「時間を取らせてすみませんでした」 そう言って先に馬車に乗り込み、俺に手を差し出す。 「いや、大丈夫だ。一人で乗れる」 ぶっきらぼうに答える俺の手を強引に掴み、馬車へと誘導する。 普段は優男なのに、時折見せる強引さに戸惑いながら馬車に乗ると、シルヴァはドアを閉めて窓から手を振ってみんなと分かれた。

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