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第15話 宝石の街

宝石の街と呼ばれている西の街に着くと、王都と差程変わらない賑わいだった。 「この街は比較的安全な街だから、安心して大丈夫だよ」 穏やかに微笑むシルヴァに頷き、街の中を歩いてみた。 至る所に宝石店が並ぶ煌びやかな街並みの中でも、一際大きな店にシルヴァは入ると 「サシャ、今日は厄介になる」 と、ガタイの良い男に声を掛けた。 「おぉ!シルヴァ王子、いらっしゃい」 厳ついのに、人懐っこい笑顔だからなのか怖い感じがしない人物が微笑む。 そして俺の顔を見るなり 「おや? 珍しいなぁ~。今日はお連れさんも一緒……って、あぁ!! あんた多朗か!!」 そう名前を叫ばれた。 「え? 何で名前を知って」 「マジで瞳の色が茶色いんだな!」 俺の言葉を遮り、顔を近付けて俺の瞳を見つめると 「本当にエンスタタイトの瞳の色なんだなぁ~」 そう言って関心している。 彼の瞳の色はペリドットのような黄緑色の綺麗な色をしている。 「王子、もう実物が居るならエンスタタイトは要らないですね」 と、彼がシルヴァに声を掛けると 「新しいのが手に入ったのか?」 って、めちゃくちゃ食い付いてる。 俺はやたら盛り上がっている2人を横目に、店内の宝石を眺めていてふと足が止まった。 そこには、シルヴァの瞳の色と同じ深い真っ青なサファイアの指輪が飾られていた。 男性用らしく、ゴツイ感じのカッコイイデザインだった。 思わず見蕩れていると 「それ、綺麗でしょう? 欲しかったら上げますよ」 そう言われて 「そんな! 買いますよ」 と叫ぶと 「良いよ! そんな高い代物じゃねぇし。王子の指輪のオマケだ」 って笑って俺の手に置いた。 手の平に置かれた真っ青なサファイアの石が埋め込まれた指輪を見ていると 「多朗も指輪を買ったんですか?」 と背後からシルヴァに声を掛けられて、驚いて指輪を手の平から落としてしまう。 するとシルヴァの手が俺の指輪を素早くキャッチして 「すみません、驚かせてしまいましたね」 そう言って、俺の手に指輪を返した。 その時、シルヴァの指にキラリと光る指輪が目に入る。 俺の指輪と同じデザインで、石は焦げ茶色だった。 「私達の国では、男女共に気に入った石の指輪を利き手の中指にはめるんですよ。お守り……のような物なんです」 そう話しながら、一度は俺の手の平に置いた指輪を長くて綺麗な指で取ると、俺の利き手の中指にはめて指輪にキスを落とした。 その時、何か呪文のようなモノを唱えていたので思わずされるがままになっていると、シルヴァは指輪をはめた指を俺の前に出し 「多朗も、旅の無事を祈って僕の指輪に唇で触れてくれませんか?」 そう言って小さく微笑んだ。 一瞬戸惑ったが、旅の無事を祈る儀式だと言い聞かせて、シルヴァの手を取り指輪にキスを落とした。 その時、シルヴァの口からやっぱり小さな声で呪文のような言葉が呟かれた時だった。 身体が光り、温かい何かが俺の身体を包み込むのがわかった。そして、同時に俺の指輪から青い光が。 シルヴァの指輪から茶色光が放たれて、2つの光が絡み合い一つになって俺とシルヴァの指輪に吸い込まれて行く。その光景の美しさに固まっていると 「多朗、もう良いですよ……。私の指にキスをしていたいなら、そのままでも良いですが」 と言われ、慌てて手を放すとシルヴァが声を上げて笑う。 「本当に……あなたはシャイですね」 頭を軽く撫でられ唇を尖らせていると 「初めて見たよ!指輪に命を宿らせる儀式」 店主が興奮気味に叫んで近付いて来た。

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