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第18話

「……う、多…………う、多朗!」 いつの間にか寝ていたらしく、シルヴァに身体を揺すって起こされる。 「シルヴァ……?」 目を擦りながら起きると、剣を片手に持って顔を強ばらせたシルヴァから 「多朗、此処に来た時にした約束を覚えてるかい?」 そう言われて、寝ぼけた頭で思考を巡らす。 そしてハッとしてシルヴァの顔を見た。 『もし、何かあったらこの窓から飛び降りて、あの裏路地に入ったらこの建物の3つ目の窓を叩いて助けを呼んでくれ。良いね』 シルヴァの言葉が脳内で木霊する。 「まだ、奴等も僕達が気付いた事に気付いていない。だからさっき下を覗いた時に、入口にしか見張りは居なかった。この裏側の窓から下に降りて助けを呼んでくれ」 小声で指示をするシルヴァの腕を掴み 「その間、シルヴァはどうするんだよ!」 と聞くと 「恐らく来ているのは10人前後。その位は僕一人で大丈夫だ。さぁ!早く」 シルヴァに言われて、裏口の窓を開けて飛び降りた瞬間だった。 部屋のドアが蹴破られる音が響き 「水神の勇者を引き渡せ!」 そう叫ぶ声が響いた。 (水神の勇者?) ふと疑問が浮かんだが、悠長に考えている暇等無かった。 言われた通り、建物の裏側3つ目の窓を叩くと、サシャが慌てて窓を開け 「シルヴァ王子は?」 と俺に聞いて来た。 「部屋だ! 早く、早く助けて!」 必死に訴えた俺に頷き、サシャが指笛を鳴らすと、街の灯りが一気に灯り人々が建物から飛び出して来た。 サシャにリラと此処に居ろと言われたが、居ても立っても居られずに 「多朗! ダメよ! 足手まといになるから!」 リラの制止を振り切り、サシャの後を追い掛けていた。 階段を駆け登ると、剣がぶつかり合う音が響いていて、数人の男達が斬り合いをしている。 その向こうに、思わず見る人を魅了してしまう程に美しく剣を振りかざすシルヴァの姿が目に飛び込んで来た。 まるで流れる水のように美しいシルヴァの闘う姿に見蕩れてしまった時だった。 背後から羽交い締めにされ 「水神の勇者を確保した! 散れ!」 と、声が響く。 その瞬間、シルヴァの意識が僕に向けられて左腕を切り付けられてしまう。 「シルヴァ!」 叫んだその時だった。 揺らりとシルヴァの周りの空気が変わる。

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