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第20話

「きっとその事を知ったら、多朗は恥ずかしがり屋のツンでデレだから嫌がるかと思って」 と、シルヴァがサシャに続いて話し出した。 「まぁ……取り敢えず、一先ずは寝直そうぜ。まだ夜明け前だ」 サシャが大きなあくびをすると、シルヴァがサシャや騎士団の人達に 「サシャ、夜分遅くに叩き起してすまなかった。みんなも、遅い時間にありがとう」 そう言って頭を下げている。 そんなシルヴァに 「良いって事よ!水くせえな、シルヴァ」 とサシャが背中を叩き、騎士団の人達はシルヴァの労いの言葉に感激しているようだった。 その時、ふと俺達を襲った奴のリーダーらしき男の言葉を思い出す。 『シルヴァ王子のあの柔和な顔に騙されんな! あいつは破壊神の化身だ』 今、目の前に居るシルヴァは穏やかで、誰よりも優しい。 そんなシルヴァが何故、『破壊神』と言われているのかが気になって仕方なかった。 みんなが去って俺達も寝室に戻ると、あちこちに刀の刃が切りつけた跡が残っていた。 シルヴァはそれを見て 「これは……父上に報告して、直して貰わなくては……」 と、申し訳無さそうにしていた。 ベッドに戻り 「先に寝るな……」 と横になった瞬間、さっきまでの事が甦り恐怖が込み上げてきた。 もし、シルヴァが居なかったら、俺はシルヴァが言っていたようにあの男達に連れ去られていた。 シルヴァが早く気付かなかったら、シルヴァが殺されていたかもしれない。 そう思ったら恐怖で身体が震え出した。 そんな俺に気付いたのか 「多朗? 大丈夫か?」 優しいシルヴァの声がした。 怯えているのを知られたくなくて黙っていると、そっとシルヴァの腕が俺を被っている寝具事抱き締めた。 「怖い思いをさせてすまなかった」 シルヴァが悪い訳じゃないのに、シルヴァを謝らせてしまった事が悲しい。 俺は飛び起きて 「シルヴァが悪い訳じゃない! むしろ、俺の為にあんな怪我までして守ってくれて感謝してる。ただ……俺が居た世界は平和で、だから自分の危機管理能力の低さに落ち込んだ。シルヴァ、ごめん。それから……ありがとう」 そう叫ぶと、シルヴァは優しく俺を見つめ 「多朗、きみは突然知らない世界に連れて来られたんだ。無理は無いよ。僕こそ、守るなんて言って守りきれなかった。……申し訳ない」 そう言って頭を下げて来た。 「シルヴァ、お前は悪くない!」 シルヴァの両腕を掴んで叫び、俺達は見つめ合う。見上げたシルヴァのサファイアの瞳が、俺を凄く心配して揺れていた。 「もう二度と、誰にも多朗を触らせない」 そう言われて、俺はシルヴァに抱き着いた。 驚いて目を見開くシルヴァに 「お前が全部背負う必要は無い。俺も一緒に戦う。だから、俺に剣を教えろ」 そう言って再びシルヴァを見上げた。 「多朗……ありがとう」 優しく微笑むシルヴァに、そっと目を閉じた。 シルヴァが息を飲んだ気配を感じ、温かいシルヴァの手が頬に触れる。 そっと唇が重なり、ゆっくり離れて行くのを感じてシルヴァの首に腕を回し 「シルヴァ、身体の震えが止まらないんだ。お前が止めてくれてくれないか?」 シルヴァを見上げて囁いた。 するとシルヴァが意味を理解したらしく 「本気で言ってるのか?」 と、驚いた顔で俺を見下ろす。 「冗談で言えるか! こんな事。いつどうなるのか分からないなら、俺も腹を括るよ。俺の気持ちは、バレちまっているみたいだしな」 ニッと笑って答えると、シルヴァの唇が荒々しく重なった。 後頭部を押さえ付けられ、唇を割り開いて舌を差し込まれる。 驚いて逃げる俺の舌を絡め取り、貪るように口内を犯される。 (やべぇ……、キスって気持ち良い……) 全身の力が抜け、シルヴァの与えるキスに酔いしれる。 ベッドに押し倒されて、シルヴァの身体の重みを受け止めると、最初は激しかったキスが、甘いキスに変わって行く。 人間の本能なのか、最初はぎこちなくしか応えられなかった舌が、シルヴァの舌を求めて絡め合い互いを求め合う。 やっと唇が離れると、互いの唇から銀糸のように唾液が糸を引いてプツリと切れた。 お互いに荒い呼吸をして、見つめ合う。 重なる中心は昂り、俺は抱かれる側だろうが構わなかった。 それより、シルヴァの熱を感じたかった。

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