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第12話

「アルト……私を抱いたからには、もう神殿からは出られないぞ」 ほくそ笑む神官長に 「待って!そんな!僕はアリアナ達と会ったり、自由に暮らしたいのに!」 そう反論すると 「大丈夫だ、神殿に謁見に来て貰えば良い」 ゆっくりとベッドから起き上がり、神官長が脱ぎ捨てた寝間着を身に纏う。 太腿から伝うアルトの残滓が見えて、アルトの方が赤面すると 「アルト、そなたがいればこの世界は私の自由に出来る」 そう囁き、アルトの頬をゆっくりと撫でると 「私の身体は良かっただろう?私を好きにして来た奴等は許せないが、こうして太陽の神子の力を得られたのだからラッキーとでもしておくよ。ありがとう、アルト。お前に抱かれていれば、私が太陽の神子になれる」 そう囁いてキスをした。 そして残虐な笑みを浮かべ 「この世界を統べる力を、やっと手に入れる事が出来た。私を捨てた家族も、私を穢した奴等も許さない」 と呟くと、ゆっくりと部屋から出て行こうとした。 「待って!神官長!!」 慌てて追いかけたアルトの身体を抱き締め 「アルト……私の愛しい番。お前は此処で何も知らず、何も見ずに私だけを愛し続ければ良い」 ニッコリと微笑んだ神官長は、まるで堕天使のようだとアルトは思った。 「何を……するつもりなの?」 震えるアルトの身体を強く抱きしめ 「アルトは何も心配要らない。この腐り切った世界を終わらせるだけだから……」 神官長のルビーのような赤い瞳が、憎悪の色に変わるのに気付いた。 「ダメだよ、神官長!」 慌てて止めるアルトにキスをすると 「アルトやアリアナには危害は加えないと誓うよ。だから、きみはここで待っているんだ」 そう言うと、アルトの額に神官長が手をかざした。 その瞬間、意識が遠のく。 神官長、あなたは一体何者なの? 僕の力って何? アルトの心の叫びは、神官長には届かない。 閉じ込められた部屋の中、アルトは神官長に太陽の神子の力を与える為に身体を重ねる。 どんなに抵抗しても、神官長の力は増大してしまいアルトの手には負えなかった。 犯されるように身体を重ねる日々。 神官長の髪の毛が、金色から黒へと変わって行く。 赤い瞳から流れる涙が血の色に変わり 「アルト……何人殺せば、私は自由になれる?」 泣いている神官長を抱き締めても、神官長の手が赤く血の色に染まって行くだけ。 穢れた心と身体に蝕まれた神官長と、身体を重ねる度に自分の身体が弱っていくのが分かる。 (あぁ……、堕天使に全て吸い尽くされるのか……) 目の前の世界が赤く染まって行く。 「アルト?アルト!死ぬな!私の唯一の善意が消えてしまう」 赤い涙を流す神官長を見つめると 「アルト……すまない。最初は利用する為に近付いた。でも、今ではアルトを愛しているんだ……。きみが居なくなったら、私は誰に本音を言えば良い?私が唯一信頼出来て、唯一優しく出来るのはアルトだけなのに……」 泣き崩れる神官長に手を差し伸べようとして、世界が真っ黒に染まる。 「アルトォォ!!!」 悲鳴のような神官長の声が、最後に聞こえた。 (泣かないで……神官長……) 手を伸ばした時、アルトの手を力強く誰かが握り返した。

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