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第15話
恐怖に怯えるルースに、神官長が箱の蓋を開けて中からグロテスクな男性器を型どった張形を取り出した。
張形にはゴツゴツとした凹凸物が埋め込まれており、小さな子供の腕程ある張形に液体を垂らした。
それが何に使われるのかを理解したルースは、必死に抵抗しようと暴れるが、無数の手に抑え込まれてしまう。
「喜べ……卑しき者よ。そなたは神の依代として、選ばれた」
そう言うと、ゆっくりと張形をルースの中へと埋め込んでいく。
悲鳴にならない声が、喉を揺らす。
(助けて!誰か!!神様、居るのなら僕を助けて!!)
ルースは心の中で祈り続けた。
しかし、ルースに助けは来なかった。
張形で中を蹂躙され、解放されたかと思った頃には見知らぬ男達に抱かれ続けた。
時間も日にちの感覚も無く、絶え間無く与え続けられる快楽にルースの心は何も感じ無くなっていた。
いつの間にか猿轡が外されていて、自分の口から吐かれる嬌声さえも他人のモノのようだった。
そして遂に
「良くぞ耐えた、ルース。そなたは今日から、神の化身だ」
やっと部屋から出されたルースは、自分の容姿に愕然とした。
美しく艶やかだったブロンドの髪が、プラチナ色になってしまっていた。
「今まで、誰もあの儀式に耐えられる者は居なかった。この美しいプラチナ色の髪こそ、髪が宿った印」
満足そうに語る神官長を、ルースはぼんやりと眺めていた。
最上階の部屋を与えられ、ルースはアルトと共に様々な教養を身に付けさせられた。
自分とは対象的に、大切に育てられたアルトをルースは憎んでいた。
だが、一緒に過ごすうちに、純粋無垢で優しいアルトに、いつしか淡い恋心を抱いてしまう。
しかし、自分は神の依代と言われながら、その実態は神官長から始まり、信者達に抱かれる穢れた存在。
ルースの恋心は、自分の胸の内に秘めておこうと決めていた。
しかし、ルース23歳。アルト17歳の時、アリアナの願いによりアルトの生存が明らかになり、7人の騎士によりアルトは教会から救出されてしまう。
王室により保護され、アルトは王子のフランシスと婚約が決まってしまう。
失意の中、死を決意したルース。
アルトだけが、ルースの心の支えだった。
唯一、教会でアルトと過ごす穏やかな時間がルースの心の支えだった。
引き離された今、もう二度とアルトに会う事は出来ない。あの穏やかな時間を過ごす事が出来ないと失望し、ルースは教会の窓から飛び降りてしまう。
一方、アルトも初めて出会った日からルースに恋をしていた。
美しい孤高の人、ルース。
しかし、彼は神にその身を捧げた人。
アルトが彼に想いを寄せる事は、禁忌だった。
しかも、ルースが自分に対して憎悪の感情を持っていたのをアルトは感じていた。
しかし、時折重なる視線、資料の受け渡しで触れる指先の熱を、アルトは忘れられなかった。
悲しげに遠くを見つめるルースの横顔を、盗み見るのが当時のアルトには精一杯だった。
そんなルースを忘れたくて、アリアナを糾弾した人物と知らずに、アルトはフランシスと婚約してしまう。
ルース以外なら、誰でも一緒だった。
そんなアルトに、ルースの訃報が届く。
ルースの手には、アルトが唯一プレゼントした花の押し花を栞にした物が握られていたと知る。
それは、庭を歩いていて咲いていた美しい白い花。
光に当てると、プラチナに輝く花弁にアルトはルースを思い浮かべた。
その時、偶然通り掛かったルースに、アルトが『あなたのような花を見つけました』と手渡したのだ。
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