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第18話 魔法学園入学

遂に、馬車は魔法学園の寮に到着した。 貴族が入る寮の部屋は、一人一室用意され、尚且つ専用執事が用意される。 アルトの場合、自宅で身の回りの世話をしてくれていたセディールが弟のエリオットの面倒も見ている為、新しい執事を両親が用意してくれた。 「初めまして、アルト様。本日より、アルト様のお世話をさせて頂きますメイソン・ヒューストマンと申します」 恭しく頭を下げる男の容姿に、アルトは声を失った。 自分のキャラで、唯一の漆黒の髪の毛に漆黒の瞳。東洋の美貌を誇るメイソンが目の前にいる。 スラリと伸びた手足と、均整の取れた美しい体躯。 サラサラの黒髪に、涼しげな切れ長の目。 クールビューティ万歳!!と、心の中で叫ぶアルトに、メイソンがニッコリと微笑む。 笑顔も美しいメイソンに、アルトはずっと身の回りの世話をしてくれていたセディールには申し訳無いが、やはり年寄りよりイケメン!!とホクホクしていた。 一方、メイソンは、噂で聞いてはいたが、一瞬、アリアナなのでは無いか?と思う程に美しい美貌のアルトに驚きながら、両親が異常に心配する理由が手に取るように分かった。 自分の美しさに全く気付かず、メイソンの顔を見てうっとりと瞳を潤ませるアルトの無防備っぷりにメイソンも心配になった。 (これは、かなり気を引き締めないと……) そう思っていると、部屋がノックされた。 アルトがドアへ行こうとするのを止めて 「(わたくし)が見て参ります。アルト様は、部屋着に着替えてお寛ぎ下さい」 と言うと、メイソンはドアを少し開けて訪問者を確認した。 訪問者は、アルトに思いを寄せる要注意人物その①のフランシスだった。 素早くドアの外に出ると 「これはフランシス様。いかがなさいましたか?」 ニッコリ微笑むメイソンに、フランシスは眉をピクリと動かした。 「アルトに会いに来た」 「左様でございましたか。しかしながら、アルト様は部屋着に着替えてしまわれましたので、ご面会は親族以外はお断りさせて頂きます」 丁寧に断るメイソンにムッとすると 「お前、私が誰だか分かっていての発言なんだろうな?」 そう言ってメイソンを睨み上げた。 「はい。この国の第一王子、フランシス様です」 「ならば、お前のその態度は不敬罪に値するぞ」 剣を抜かれ、切っ先を喉元に向けられてもメイソンは眉一つ動かさずに真っ直ぐフランシスを見つめている。 魔法学園にいる間は、王室だろと貴族だろうと関係無いという事に表向きはなっている。 なので、いくら王族でも、理由なくこの学園で人を傷付けてはいけない事になっていた。 メイソンに静かな眼差しのまま 「私はフィルナート家に雇われた身です。いかなる状況であろうと、フィルナート家に言われた事を守るのが仕事です」 そう言われて、フランシスは舌打ちをすると剣を鞘に戻し 「フィルナート家は、アルトに優秀な番犬を付けたって訳か……」 と呟いた。 メイソンは恭しくお辞儀をして 「勿体無いお言葉でございます。学園内では、アルト様のご学友として、仲良くして下さい」 そう言い残し部屋に戻った。 メイソンは深い溜息を吐くと、アルトの両親からは、アルトがとにかく色々な人から結婚を申し込まれて困っているとは聞いていた。 しかしだ。 その中に、王家の……しかも第一王子が含まれているとは聞いていなかった。 (こりゃ~、法外に賃金が良い訳だ) そう思いながら、メイソンは苦笑いを浮かべた。

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