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第19話
「今日は良い天気で良かったですわね」
アリアナの左右には、アルトとロベルタが居て上機嫌なアリアナ。
入学式にピッタリな晴天の中、制服に身を包み寮から学園までを三人で歩いていた。
「そう言えばアルトの執事、凄いイケメンだよな」
ロベルタが呟くと
「あら!ロベルタの方が素敵ですわ」
アリアナが間髪入れずに切り替えす。
「えぇっ!あんなイケメンと比べないで欲しいし、僕はあんなイケメンには敵わないよ」
苦笑いするロベルタに、アリアナは頬を膨らませて
「そんな事無くてよ!ロベルタは優しくて真摯で、とても素敵ですわ」
あばたもエクボ状態のアリアナに、アルトとロベルタは顔を見合わせて苦笑いする。
「それに、あの方はとても強い方らしくて、たくさんの死線を潜り抜けて来た方だとお父様とお母様が仰っていたわ。そんな怖い方は、どんなに美しい容姿をしていたとしても、私には無理ですわ」
メイソンにだって選ぶ権利はあるだろうに、美しく愛らしいアルトの妹は、自分にしか選ぶ権利が無いとばかりに言い放った。
「まぁ、アリアナにはロベルタという素敵なフィアンセがいるのだから、他に目がいかないのは当然だよ」
アルトがそう言って微笑むと、アリアナとロベルタは顔を見合わせて頬を染めている。
(良い!まさに青春って感じだよ!!)
アルトはそんな気持ちを噛み締めていた。
実際、アリアナとロベルタは実に素晴らしいカップルだとアルト自身思っている。
お互いに思い合い、寄り添い合って幸せそうだ。
このまま行けば、アルトが居なくなったとしても、破滅フラグなど現れないのでは無いか?とさえ思う。
そんな事を考えていると
「やぁ、アルトにアリアナとロベルタ。おはよう」
キラッキラの笑顔を浮かべて、フランシスが現れた。
すると、サッとフランシスとアルトの間にアリアナは入り込み
「ごきげんよう、フランシス様」
と、挨拶を返す。
「フランシス様、おはようございます」
アルトとロベルタも挨拶をすると
「昨日、きみの部屋を尋ねたら、無礼な執事に追い返されたんだ。アルト、執事を変えた方が良いのではないか?」
開口一番に言われ、アルトが反論しようと口を開く前に
「あ~ら!フィルナート家では、部屋着に着替えたら親族以外にはお会いしませんの。執事はそれを守ったのではなくて?」
とアリアナが反論してしまう。
(アリアナ!そんな態度したら、断罪されちゃうよ!)
ハラハラしているアルトに、フランシスはニッコリと笑顔を浮かべて
「心配いらないよ、アルト。きみの妹の無礼な態度は、きみが今日のランチを一緒に食べてくれたら帳消しにするから」
そう言って、軽くウインクした。
どうやら、最初からそのつもりでアリアナをけしかけたらしい。
さすが腹黒王子だ。
僕は苦笑いしたまま
「そんな事でよろしければ……」
と答えた。
「まぁ!では、もちろん私達もご招待頂けますのよね?フランシス様」
「きみはロベルタと2人で食事をしたらどうだい?」
「とんでもございませんわ!アルトがフランシス様に失礼な事をしてしまったら申し訳無いですもの!」
「安心したまえ。僕は、アルトの言動全てを寛容に受け入れるから」
「まぁ!フランシス様ったら、お優しいのね。そんな方が、執事の事でお小言を仰るなんて……」
「小言だなんて……。アルトに会わせてもらえなくて、悲しかったと伝えただけだ」
アルトになんとか近付こうとするフランシスを、アリアナが全力で阻止しながら言い争う様は、もはやコントのようだ……と思いながらアルトは深い溜め息を吐いた。
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