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第28話

本が落ちた音にメイソンと視線を本に送り、ハタと我に返った。 アルトは現状に気付き、慌てて肘で止まっていたシャツを着直し前を閉じると、ゆっくりとアルトに視線を戻したメイソンが苦笑いを浮かべた。 「なんだ……もう、正気に戻っちまったのかよ」 ぽつりと呟き、ゆっくりとアルトの身体を起こした。 そして床に落ちた本を拾うと 「アルト様、あなたはこの本を読んでいらっしゃらないんですよね?」 そう聞いてきたので、アルトがコクコクと激しく頷くと 「読んでおいた方が良いですよ。これはどうやら、予言書的な物になっているようです」 と言って本をアルトに手渡した。 「月の巫女は予言を。太陽の神子は、人の思念を読み取るって訳か……」 メイソンはポツリと呟くと、何やら考え込んでしまった。 アルトはそんなメイソンを横目に見ながら、本をパラリと捲った。 見開き初っ端から 『アァっ!メイソン…………もっと、もっと奥を突いてぇ…………』 と、アルトの部屋の寝室で激しくバックで突かれているシーンから始まり、思わず卒倒しそうになる。 ページを捲ると、見開きページに至った経緯が始まる。 人の思念が読めてしまうアルトが、不意にメイソンが触れられたくない話題に触れてしまい、長椅子に押し倒されてしまう。 しかし、メイソンの足がテーブルの茶器に当たり、紅茶が零れてしまうと、それで我に返ったアルトとメイソンは、一度は正気に戻すものの、メイソンの過去の話にアルトが同情して身体を重ねてしまう。……というストーリーだった。 過去の話や細かい描写が秀逸で、敵ながら思わずウルウルしてしまう。 そして読み終わり、本を閉じて思わずギョッとした。 腐女子(マリアンヌ)のペンネームが、ゲームのツキナナのキャラデザした人物の名前だったのだ。 (だから、似顔絵が得意なんだ……。そりゃあ、自分がキャラデザした人物画なら、簡単に描けるわな……) そう関心していると、メイソンが本をアルトから奪い 「この本は焼却致しましょう」 と呟いた。 「傍にあると、この本の効力が私達に影響してしまうようです」 そう言われて、アルトは思わずメイソンの腕を掴み 「メイソン……。もしかして、この本の中のきみの過去の話は、真実なの?」 と聞いてしまった。 それがどんな結末になるのかも、全く考えもせずに……。 そんなアルトに、メイソンは眉をピクリと動かし 「アルト様、私の話を聞いていましたか?この本は、私達の傍にあったら効力を発揮してしまうのです。ですから……」 そう言いかけたメイソンのネクタイを掴み、アルトは引き寄せて唇を奪う。 「メイソン!今、本の効力の話はどうでも良い!この内容に相違があるのか?ないのか?それを聞いているんだ」 真剣な眼差しで聞かれ、メイソンはアルトから視線を逸らした。 それが『肯定』だと察する事が出来ない程、アルトは鈍感では無かった。 「そっか……」 そう呟いて、アルトは小さく溜息を吐く。 「メイソン。僕はキミを心から信頼しているし、これからもずっとキミには僕の傍に居て欲しいと思っているんだ。だから、僕に隠し事をしないで欲しい」 そう言ってメイソンの首に手を回し、抱き寄せる。 「ア……アルト様!」 驚くメイソンに 「ねぇ、メイソン。僕はキミを決して裏切らない。信じられないなら、いつでも僕を試してくれても構わない。だから、キミの真実をキミの口から聞かせてくれないか?」 と伝えた。 メイソンは暫く黙り込むと、ゆっくりと頷いて抱き寄せているアルトから身体を起こし、隣に腰掛けた。

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