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狼と兎が流れ星に祈る時③【狼視点】

 3日目の夜。  死ぬ程の苦しみを3日3晩……って莉久(りく)が言ってたけど、そんなのアテになるはずないってわかってる。  こんな生活が、永遠に続く可能性だってある。  仕方ない。何も確立されていない方法に、俺達は無謀にも挑んでいるんだ。 「寛太(かんた)……」  (わたる)がうっすらと目を開いて、俺の名前を呼んだ。  その顔は疲れきっていて……でも、いつもみたいに可愛かった。  発情(ヒート)の合間の、束の間の休息が訪れる。  風呂に入れてやったり、飯を食わせてやったり、やれることは何でもしてやりたいと思った。 「赤ちゃんみたいじゃん」  甲斐甲斐しく世話を焼いてやったら、下唇を尖らせて不貞腐れてしまう。  そんなとこも凄く可愛くて、思わず笑ってしまった。 「航、疲れたな……」  風呂上がりの航から、シャンプーのいい匂いがした。 「迷惑かけてごめんな」  そう言いかけた航の口を手で塞ぐ。 「うるせぇな、犯すぞ」  怒ったようにそっぽを向いて見せた。 「愛してるよ」 「え?」  航の言葉に目を見開く。  お前、まだそんな事言えるんだ……。  どんだけ、どんだけ俺に惚れてんだよ。 「ありがとう」  涙声になって、ちゃんとした言葉にならなかった。  その日の夜、今までで一番凄まじい発情(ヒート)が航を襲った。  もう人間じゃない……獣みたいだ。  血走った目に、全身に浮き出る血管。髪を逆立たせ荒い呼吸を繰り返す。 「うぉぉ……!!ぐっ……苦しい……苦しい……!!」    胸を掻きむしり、抱いて欲しいと懇願する。  こんなん、痛々し過ぎる。  初めて聞いた「苦しい」っていう言葉に、俺の目からは自然と涙が溢れた。  唇を強く噛み締め、航を抱き締めた。  その瞬間、耳元で聞こえた航の声に息を呑んだ。 「寛太を抱きたい……」 「え?」  俺は獣のような航を見つめながら、言葉を失った。  

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