32 / 93
狼と兎が流れ星に祈る時③【狼視点】
3日目の夜。
死ぬ程の苦しみを3日3晩……って莉久 が言ってたけど、そんなのアテになるはずないってわかってる。
こんな生活が、永遠に続く可能性だってある。
仕方ない。何も確立されていない方法に、俺達は無謀にも挑んでいるんだ。
「寛太 ……」
航 がうっすらと目を開いて、俺の名前を呼んだ。
その顔は疲れきっていて……でも、いつもみたいに可愛かった。
発情 の合間の、束の間の休息が訪れる。
風呂に入れてやったり、飯を食わせてやったり、やれることは何でもしてやりたいと思った。
「赤ちゃんみたいじゃん」
甲斐甲斐しく世話を焼いてやったら、下唇を尖らせて不貞腐れてしまう。
そんなとこも凄く可愛くて、思わず笑ってしまった。
「航、疲れたな……」
風呂上がりの航から、シャンプーのいい匂いがした。
「迷惑かけてごめんな」
そう言いかけた航の口を手で塞ぐ。
「うるせぇな、犯すぞ」
怒ったようにそっぽを向いて見せた。
「愛してるよ」
「え?」
航の言葉に目を見開く。
お前、まだそんな事言えるんだ……。
どんだけ、どんだけ俺に惚れてんだよ。
「ありがとう」
涙声になって、ちゃんとした言葉にならなかった。
その日の夜、今までで一番凄まじい発情 が航を襲った。
もう人間じゃない……獣みたいだ。
血走った目に、全身に浮き出る血管。髪を逆立たせ荒い呼吸を繰り返す。
「うぉぉ……!!ぐっ……苦しい……苦しい……!!」
胸を掻きむしり、抱いて欲しいと懇願する。
こんなん、痛々し過ぎる。
初めて聞いた「苦しい」っていう言葉に、俺の目からは自然と涙が溢れた。
唇を強く噛み締め、航を抱き締めた。
その瞬間、耳元で聞こえた航の声に息を呑んだ。
「寛太を抱きたい……」
「え?」
俺は獣のような航を見つめながら、言葉を失った。
ともだちにシェアしよう!