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狼と兎の生誕祭①【全て兎視点】

 人間は生まれてきた瞬間に、男と女という2種類に弁別されたあと、更にΩ、α、βという3種類に分別される。  自分がどれになりたいなんて選べるはずもなく、神様の思いつきで勝手に決められてしまう。 理不尽極まりないけど、それすら運命だと受け入れざるを得ない。  Ωはαに支配され主と奴隷の関係へと堕落する。  αがΩの首に噛みついた瞬間、運命の歯車によって全てを狂わされていく。  その関係はまるで狼の群れのようで…。 強い者が群れを支配し、弱い者は支配者に尾を振るか、群れを去る以外に生き延びる術はない。  俺は運良く寛太(かんた)という、最高の番に出会い、愛してもらうことができた。  でも、俺みたいに幸せな人生を送れるΩは世界中に一体何人いるんだろうか。  不幸な人生を辿るΩを思えば、心が傷んだ。 「お腹の赤ちゃんどっちだろうね?」  真広(まひろ)が嬉しそうに俺のお腹をさする。 「(わたる)の性格的に女の子の気がする」 「けどパパは男の子がいいんだもんね」  真広と玲央(れお)が、豆太郎(まめたろう)の性別のことで盛り上がっている。  最近は、こいつらが集まれば大概この話題で持ちきりになる。  生まれる前からみんなに大切にされてる豆太郎は、本当に幸せ者だと思う。  かなり大きいサイズの洋服を着てるから、 そんなに目立たないけど、大分ふっくらしたお腹。  みんなが代わる代わるお腹を触って、「あっ、今動いた!」って喜んでる。  きっと豆太郎は、誰が本当のパパか混乱してるんじゃないかって考えただけで可笑しくなった。  当のパパは、いつ俺が入院してもいいよう仕事に区切りをつける事に必死で、最近はゆっくり話もしてない。  その代わり、いろんな代理パパが交代で会いに来てくれるから、全然寂しくないけど。 「また玩具買ってきちゃった」  恥ずかしそうにはにかむ玲央を見てるだけで、幸せになれた。  予定日も近くなり、定期検診が4週間に1回だったのが2週間に1回、それが週1回となった。  最近は、仕事に集中してほしいから1人で検診に来るようになった。  性別か……。  みんなは性別がわかるのを楽しみにしてくれてる。  でも、俺は不安で仕方ない。  いつものおばあちゃん先生が、俺のお腹に超音波の機械を当てて、胎児の心音を聞かせてくれる。  トクトクトク……。  自分の心音より、速くて軽やかな音を聞けば元気なんだって安心する。 「今のところ逆子じゃないし、体重も順調かな」  おばあちゃん先生は、いつも丁寧に診察してくれるから本当に信頼できる。 「あっ!?」  おばあちゃん先生の驚いた声に、俺までびっくりしてしまう。 「性別知りたい?」  優しく微笑まれたから、少しだけ悩んだあと、 「知りたいです」  って答えた。  おばあちゃん先生が悪戯っぽく微笑んで、そっと豆太郎の性別を教えてくれた。

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