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紫藤 救出作戦進む

次長室へと帰る途中、真尾は瀬谷と出会(でくわ)した。 「あ、瀬谷先生。紫苑くんにいま会ってきましたよ」 「宵くん。ありがとう。泣いてなかったかい?あの子」 「大丈夫そうでしたよ?」 「そうかそうか。帰りたいって泣いていたから心配していたんだ」 「ホームシックですか?」 「そんなとこかな?大人ぶってるけど甘えん坊だからね、紫苑は」 「瀬谷先生はそろそろお帰りですか?」 「いや、佐渡先生に会いに行ってくるよ」 「佐渡先生?」 「そう。紫藤先生のことで相談がね」 「何かありました?」 「宵くんから見て紫藤先生はどうだい?」 「んー…ちょっと患者さんとの壁を感じますね。殻にこもってるというかなんというか…僕は看護師で彼は医師なのでなんとも言えないですけど…あまりよくはないですよね?このままじゃ」 「宵くんならどうする?」 「そうですねぇ…難しいところだけど、、カウンセリングができればいいですよね。学生の時はあそこまでツンツンしていなかったから何かあったんだと思うし…後は…信頼のおける上司か誰かのサポートと指導ですかね。あ…もしかしてそれで佐渡先生ですか?」 「そう、そう思ってね」 「うまくいくことを祈ってますね」 「ありがとう。じゃあ、また」 「はい、お疲れさまです」 瀬谷は真尾と反対方向へと歩いていき少年棟を目指し、少年棟医局へとおもむいた。 中に入ると佐渡がひとりでいて瀬谷は口を開き 「佐渡先生、当直前のこんな時間にすまないね」 「いえ。紫藤のことなのに俺ひとりで…っていうのはいったい?」 「うん、そのことなんだけどね。座らせてもらうよ?」 瀬谷はソファに腰掛け 「よっと…歳だね。ついかけ声が出てしまっていけないね」 「いや、まだお若いじゃないですか。お子さん15歳でしたよね?ここに入院したとは申し送り受けてますけどまだ会っていなくて」 「そうなんだよ。迷惑かけるね。その息子がね、紫藤先生を心配していてね?」 「それはいったい…」 「あの子は人をよく見ている子でね、このままでいくと先生が孤立して精神的に潰れて大変なことになるんじゃないかと危惧しているようなんだよ。まあそれよりも紫藤先生が怖くて自分が治療受けれないから困るっていう方が切実のようだがね。そこできみの力を借りたくてね」 瀬谷の言葉に佐渡は両手の指の先と先を合わせ前のめりになり考え込んだ

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