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第17話
「オッケーってことでいい? 」
夏川の問いに朝霧は小さく頷いた。
「そこら辺のホテルで良いよね? 行こう」
朝霧と指を絡め、夏川が歩き始める。
夏川の掌の熱さに、煽られた気分になり朝霧は足を速めた。
決して綺麗とは言えないラブホテルだった。
それでも、朝霧はそこの一室に入って、夏川に抱きしめられた瞬間、死んでもいいと本気で思った。
幼い頃から自分の性癖に悩み、家族から疎まれ、碌な男と付き合って来なかった朝霧の人生で、こんな理想の男に抱きしめられるなんて経験、二度とあり得ないと朝霧は歓喜のあまり泣きだしそうだった。
「夏川」
呟いた朝霧の唇にそっと夏川が人差し指を乗せる。
「リョウって呼んで。俺も帝って呼ぶから」
朝霧は恥じらいで目元を赤く染めながら、頷いた。
「シャワー浴びたいんだ」
朝霧の要望に夏川が頷く。
「ああ。じゃあ、一緒に入ろう」
「いや、準備があるし。俺、ネコは久々だから……」
「なら余計に一緒に入らなきゃ。俺が全部やってあげるよ」
なぜそうなると朝霧は反論したかったが、酔った頭と体ではろくな抵抗もできずに、気がつけば全裸で、浴室に放りこまれていた。
夏川がシャワーをひねり、温かな湯の下に、朝霧を誘う。
「ん…うんっ、ふ」
キスをしながら、夏川が朝霧の全身に掌を滑らせる。
「綺麗な体」
朝霧は幼少期から太陽のしたで駆け回るタイプではなく、元から色白だったため、その体にはシミ一つなかった。
浅黒い夏川の肌と並ぶと、朝霧の白さは一層際立った。
ふいに夏川の手が止まる。
「これは……怪我? 」
朝霧の肩甲骨の辺りには二つの傷跡があった。
朝霧がぱっと夏川から体を離す。
「小さい頃、木登りをして落ちたんだ」
「そう。痛かったろうね」
夏川は朝霧の体をひっくり返すと、傷に口づけた。
「夏川」
「リョウだよ」
夏川は少しづつ、体を下げ、ついには朝霧の尻に口づけた。
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