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玉ねぎの味噌汁

 眩しい朝の日射しが射し込んでくる。  遮光カーテン引いて寝たはずだから、瑞希が先に起きて開けたんだ。  明るい日差しと、それに、いい匂いが漂ってきてる。こんな朝は何年振りだろう。  寝室から出ると瑞希がキッチンでちょこまかと、また小動物っぽく忙しくて動いてるのが見えた。  ……可愛い後ろ頭してるな。 「おはよ」  後ろからハグして、可愛いなと思ったつむじと首筋にキスしてくと、お玉持ったままフリーズしてるようだった。  あ~、美味しそうな玉ねぎの味噌汁が沸騰してる。  痕はつけないようにチュッチュッと首筋にキスを落として気がついた。奉仕の仕方覚えさせるはずなのに何してるんだろ俺…。  ちょうどいい高さにある瑞希の肩に顎を乗せてボーゼンとしていたらフリーズし終わったらしい瑞希がもぞもぞと顎をどかしてと言うように動き出した。 「お、おはよう遼一」  火を止めてからこちらを向く。そんな勢いよく振り向かれたら顎も落ちるしかなくて体勢を崩した。  「えぃ!」  掛け声かけてから抱きつかれて頬にキスされる。  瑞希なりに頑張ってみたらしい。  掛け声…こんなんで…(以下略)朝っぱらなのに男なのに、ぷるっぷるに潤ってる唇が気持ちよかったからまぁ有りだけど、ほっぺにチュっくらいでこんな気合必要って、前途多難な感じ。  さて、いつも通りそろそろ博美さんがが寝坊助な俺を起こしにもうすぐ来てくれるはず…。とカレンダーを見ると今日は休みの日だった。  のろのろと食卓について瑞希に声をかける。 「瑞希、俺にっていうか人肌に慣れるのもそうだけど、俺今日休みなんだわ。したい事あるか?瑞希も日曜だから休みだろ?」  いい匂いの玉ねぎの味噌汁とご飯を運んできてくれる。うちにこんな食器あったの忘れてたな。昨日掃除しながら見つけてくれたんだ。 「俺…、家とか店とか手放すようだろ?その前に見ておきたい。最後にあそこでパン作りたい。いいかな?」 「いいよ。今日一緒に行こう」 瑞希が食べてるとこは頬袋に食べ物詰め込んでるハムスターみたいで、思わず膨らんでる頬をプニッと掴んでしまった。 「あにすんの?」 「頬袋みたいでつい………」 「遼一の行動って読めないよね。高校の時も急に文化祭の準備手伝ってくれたりさ」 「そんなことあったか?」 「あったよ!…びっくりしたんだからね…」  覚えてる。一人で残って頑張ってる瑞希見たらほっとけなかったんだ。  あと少しだからみんな帰って休みなよ?とか言ったんだろって思ったら、ついな。少しだけ、瑞希の記憶に残りたかったのかもしれない。 「瑞希。瑞希の味噌汁美味いね。また作って」

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