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つむじすら可愛い

 −−鈴木遼一side−−−    昨日は思う存分瑞希を甘やかしてやろうと思ってたのに、肩透かしをくらった気分だ。  まだ信頼関係が出来上がってなくて、俺の前では泣けないのかもしれない。「泣きたくなったら遼一のとこ借りるから〜!」って叫んでたのは可愛かった。俺に気を使って、俺のとこ借りるからなんて言ってくれる、可愛い瑞希。  結局俺が瑞希を抱きしめたまま離さず、互いに腹が鳴り出した。 「あっ……夕飯作るね」  いい口実になった、逃げる機会だ、とでも思ったんだろう瑞希が俺の腕から逃げ出そうとする。 俺は、まだ離したくなかった。 「今日は弁当の配達頼むからいい。まだここに居てくれ」 「でも……食事作らなきゃ…」  「食事作るよりも俺に慣れて人肌に慣れて、早く借金返せた方がいいだろう」  結局弁当じゃなくピザを頼んで食べた。  それぞれシャワーに入って、まだ瑞希に触り足りない、物足りない俺は、ベッドで瑞希を抱きしめて寝た。瑞希も、夕方同様に抱きしめ返してくれた。  すこしずつ俺に触るのに慣れてきたようだ。努力家の瑞希のことだから、我慢我慢、借金を返すための道のりって脳内で唱えてたんだろう気もするが。  仕方ない。そういう運命なんだろう。  俺と瑞希は…借金を背負った者と回収する者の関係。それだけでしかないんだ。  瑞希の実家で弟妹と接してたら忘れる所だった。普通の元同級生とは違うんだ。瑞希の内側に深入りしちゃいけない。    抱きしめて眠ったはずの瑞希はもう隣にはいない。代わりに、今朝もキッチンから美味そうな匂いがしてくる。これは…味噌汁だ。  寝癖の頭を掻きむしりながらキッチンに行くと、スウェットから会社に行く服に着替えて味噌をといてる瑞希がいて、思わず後ろから抱きしめた。あれっ、こんな光景前もあったな。  瑞希に触れるうちに触っておこうと脳内で考えてるのかもしれない。体が勝手に動いて瑞希に触れてしまう。よくない傾向かもしれないけれど、今だけ、今だけならきっと許される。 「遼一?おはよ」 「ん。おはよ」  振り返って挨拶をしてくれる瑞希。俺の方が多分10センチは背が高いから、自然と見上げられる、上目遣いの瑞希になる。  可愛い…。見てられなくて、見ていたらその小動物のような瞳に吸い込まれそうで、瑞希のつむじ辺りに突っ伏した。

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