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第12話

地味なスーツを着たかーちゃんを後ろにのせて式場経由で渋谷に戻った。 トマト以外の朝飯を食う時間はあるな、と思い梵に寄ると、店内にはオーナーの(タイラ)さんしかいなかった。 「いらっしゃい、って勘助か。おはよう、朝ごはん?」 「ん、タイラさんしかいないの?雪兎は?」 手早く用意しながら苦笑される。 「お前は、ホント雪兎が好きだよね。奥で寝てるよ」 うぅ、イタズラしに行きたいけど飯食わなきゃいけないし、食べながらイタズラするのも行儀悪いし。 ぐるぐる考えながら揺れている間に、おにぎりとゆで卵とみそ汁の朝飯が準備されてゆく。 ええい、仕事終わって戻ってきた時に寝てたら何かしてやる!! 持ち出し(テイクアウト)できないみそ汁を飲み干してから、おにぎりに手を伸ばすと、タイラさんが「相変わらずだな」と頭を撫でてきた。 片手で食べながら道路状況や事故ニュースをざっと確認する。 タイラさんは、とーちゃんとかーちゃんの昔からの知り合いでいつも構ってくれるありがたい人だ。でも、かーちゃんにいわせると「あんた狙われてるから気を付けるんだよ!」だって。 そうか?そりゃ小さいころから餌付けされてはいるけど。 しかしタイラさんに言わせると「浜子はホモ漫画の読みすぎ」だそうだ。 ん? ------- 朝イチの仕事に続いてどんどん依頼が入り、結局梵に戻ったのは16時を過ぎていた。 行く先々できのこの山だのひまわりの種だのを貰っているけど、さすがに腹は減るし、バイクをおりると集中力が途切れて頭が回らなくなってくる。 「ただいまー、昼飯ちょうだーい」 ヘロヘロになって扉を開けた途端目の前に雪兎が駆け寄ってきた。 「勘ちゃん、僕!僕さ!突っ込むことはできないけど、いつかお金たまったら迎えに行くからね!それまで頑張るんだよ!」 「は?雪兎なんの話…」 耳まではいってきたけど、言葉がのーみそまで届かない。 店の中を見るとみんなこっちを見てる。え?なに? 中田さんと田中さんが憐れむような目でこっちを見てるぞ。 「勘ちゃん…浜子さんに売られたんだって?」 「え?売られた?誰が?」 雪兎が両手を祈るように合わせてぷるぷる震えている。 「あんたの貞操が交渉の結果43万になったって…不憫な子ねぇ。ちゃんと半金は先払いしてもらうのよ」 同情した顔で中田さんか田中さんが何やら具体的なアドバイスをしてくる。 いや、なに、その話、なんだっけ? 俺のテーソー?テーソーって何だっけ? 「ていうか、43万円って…高くない?僕そんなに貯められる自信がないよ…」 雪兎がまたさり気なく酷いこと言ってる気がするけど、気のせいだよな? 確かに雪兎は猫カフェとかフクロウカフェに金つぎ込んでるから…ん? それってつまり俺よりも猫カフェの方が、あれ?え?……って事? タイラさんだけがカウンターの後ろでにやにや笑っていた。 「祝が43万払ってまでやるかが見ものだな」 そーだよ何の話か思い出した、かーちゃんとヒワイさんのよんじゅうさんまんえんの契約書、じゃなくて誓約書! 「ちーがーうー!金もらったらやらせるわけじゃなくて、やられたら金を貰うんだよーーーー!」 と叫ぶ俺に全員が 「何が違うの?」 と聞いてきた。 あれ、違わないのか?

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